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斉藤大臣
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斉藤鉄夫国土交通大臣は2024年の新春インタビューで中長期的な見通しの下、安定的・持続的な公共投資を推進し、戦略的・計画的な社会資本整備を進める考えを示した。国土強靱化への取り組みや予防保全型のインフラメンテナンスなどのほか、建設業の担い手確保のため工期適正化による週休2日確保や、賃金行き渡りに関する制度改正に取り組むとした。建設業のDX、GXの推進、水道事業移管による今後の体制などについて見解を示している。
――防災・減災、国土強靱化、老朽化するインフラ対策など、今後の社会資本整備・更新の進め方について
斉藤 激甚化・頻発化する豪雨災害や切迫する大規模地震、いつ起こるか分からない火山災害などから、国民の命と暮らしを守ることは国の重大な責務と認識しています。
防災・減災、国土強靱化5か年加速化対策については、23年度補正予算において4年目の予算を確保したところです。引き続き、必要・十分な予算の確保に努め、着実に取り組みを進めてまいります。
また、昨年6月に国土強靱化実施中期計画が法定化されたことにより、5か年加速化対策後も切れ目なく取り組みを進めることが可能となりました。国土交通省としては、関係省庁とも連携し、計画の策定に向けて、施策の実施状況の調査を進めていくなど、国土強靱化の取り組みをしっかりと進めてまいります。
次に、加速度的に進行するインフラの老朽化への対応も喫緊の課題です。特に、地方公共団体は、インフラを維持管理する上で財政面・人材面での大きな課題を抱えています。
このような状況をふまえ、広域・複数・多分野のインフラを「群」として捉えて戦略的にマネジメントを行う、地域インフラ群再生戦略マネジメント、いわゆる「群マネ」を推進することとしており、今後は、モデル地域での取り組みを進め、その知見を全国へ展開してまいります。
国土交通省としては、引き続き、地方公共団体等が管理するインフラも含め、「予防保全型」のインフラメンテナンスへの本格転換を図るなど、計画的な維持管理・更新に取り組んでまいります。
最後に、社会資本整備は、未来への投資であり、生産性の向上や民間投資の誘発を通じて、地方を含めわが国の経済成長や持続可能で暮らしやすい地域社会を実現するためにも必要不可欠です。
国土交通省としては、引き続き、建設業者の皆さまが安心して設備投資や人材育成を行うことができるという観点からも、中長期的な見通しの下、安定的・持続的な公共投資を推進し、戦略的・計画的な社会資本整備を進めてまいります。
――建設産業の働き方改革と担い手確保・育成に向けた展望について
斉藤 建設業は、社会資本整備の担い手、「地域の守り手」として重要な役割を担っており、将来にわたってその役割を持続して果たしていくためには、働き方改革などを進め、担い手の確保・育成に取り組まなければなりません。
本年(24年)4月から、いよいよ建設業においても時間外労働の上限規制が適用されます。まずはこれに的確に対応するとともに、より一層の働き方改革を推進するため、工期の適正化をさらに進め、週休2日確保や残業縮減を実現してまいります。
また、担い手の確保のためには、技能者の処遇改善も必要不可欠であります。経験と能力に応じた処遇を目指す建設キャリアアップシステムを、引き続き推進するとともに、賃上げの原資となる労務費が、技能者に賃金を支払う専門工事業者まで、適切に支払われるよう、必要な制度改正にも取り組んでまいります。
――資材価格高騰などを踏まえた適切な公共事業の執行と必要な事業量確保への考え方について
斉藤 現下のような資材価格の高騰を踏まえれば必要な事業量を確保するとともに、事業の執行段階においても、市場実勢を反映した予定価格の設定や、資材価格高騰を踏まえた契約変更を適切に実施する必要があります。
このため、国土交通省の直轄工事では、最新単価の予定価格への反映、適正な工期の設定、契約後の状況に応じた契約変更(スライド条項の適切な運用等)に取り組むとともに、地方公共団体に対しても同様の取り組みを要請してまいりました。
今後とも、必要かつ十分な公共事業予算の安定的・持続的な確保に取り組みながら、資材費の高騰を踏まえた適切な転嫁対策を進めてまいります。
――建設業のDX、GXの取り組みについて
斉藤 国土交通省では、ICTの活用等により建設現場の生産性を向上させる「i-Construction」を中核に、これをさらに発展させる「インフラ分野のDX(デジタル・トランスフォーメーション)」を推進しております。
具体的には、建設施工における自動化・遠隔化の普及促進に向けた取り組みを進めるとともに、ドローンを活用した3次元測量をはじめとしたICT施工の中小建設企業への活用拡大に向けた、基準等の整備、アドバイザー制度による支援、研修等の実施に取り組んでいるほか、直轄土木工事・設計において原則適用しているBIM/CIMやICT施工の更なる高度化により、建設生産プロセス全体のデジタル化に取り組んでいるところです。
23年8月には、国土交通省において「インフラ分野のDXアクションプラン第2版」を策定し、既に活用されているデジタル技術をインフラ分野ごとに分類したインフラDXマップを初めてとりまとめたところです。これにより、各分野におけるデジタル技術のさらなる活用を図ってまいります。
建築分野における BIMの普及拡大については、まず建築BIMによる建築確認の実現に向けた環境整備や、中小事業者が建築BIMを活用する建築プロジェクトへの支援などの取り組みを進めてまいります。
また、官庁営繕事業におけるBIMの活用については、23年より、原則全ての新築の設計業務と工事において、BIMの発注仕様書である「EIR(発注者情報要件)」を適用するなどの取り組みを推進しております。
インフラ分野のDXにより、生産性向上やサービスの高度化を進めてまいります。
建設分野の脱炭素化に向けては、CO2削減に資する材料、建設機械の導入などの取り組みを進めていく必要があると考えており、直轄工事においてCO2削減に資するコンクリート等の建設材料の現場試行などの取り組みを推進します。
また、道路照明灯のLED化による省エネ化や、ハイブリッドダムの取り組み等による水力発電の強化等を推進し、インフラにおける省エネ、再エネ等の対策をトータルで進めてまいります。
――水道事業の移管による今後の取り組みについて
斉藤 今年の4月から水道行政を国土交通省が所掌することとなりました。上下水道一体の組織体制を整備することとしており、本省に局長級の上下水道審議官を配置するとともに、事業主体である自治体の支援窓口となる地方整備局等に水道担当の組織を新設します。
災害時には地方整備局等の持つ現場力・技術力を活用し、迅速な情報収集や調整、応急給水の実施など自治体支援を行ってまいります。
また、水道行政と下水道行政をあわせて所掌することにより、水ビジネスの国際展開や、官民連携、技術開発などの共通の課題に対し、一体的かつ効率的に取り組んでまいります。
移管に向け、水道水質基準を所掌する環境省とも緊密に連携しながら、水道行政の一層の機能強化が図られるよう、万全を期してまいります。