現場が抱えるジレンマ⑥ 書類に追われる監督-会計検査恐れる発注者
2015/04/01特集企画/PR
建設メール
道路工事の現場を取材した。車で直接向かうと、事前に電話でやりとりをしていた現場監督の姿がない。下請作業員に聞くと、管理事務所にいるとのこと。すぐ引き返して学校跡地に設けられた事務所へ向かった。中に入ると、書類片手にパソコンで作業する現場監督の姿。「きょうまでに実施工程表を提出しなければならない」と焦りを見せる。結局その日、書類の整理に追われ、彼が現場に向かうことは無かった。
なぜ、それほどまでに提出する書類が多いのか。現場監督は「発注者が会計検査を恐れているから」と指摘する。会計検査は、正しく予算が使われているかチェックする機関。指摘されたくない発注者は、保身のため過度に書類を提出させるという。そうして書類重視の工事評価が慢性化している。
より良い書類を作成するため、パソコンに長けた若者を使わざるを得ない企業。経営事項審査で若手雇用や育成が加点評価されるのであれば、なおさらだ。
現場での指示は、もっぱらベテランや下請けまかせ。だが、評価されるのは書類を作成した若手技術者。これではベテランの立場はない。「会社に迷惑はかけられないから」と現場を離れる者もいるという。
行政はもっとベテラン技術者を優遇すべきではないか。表彰制度や加点制度などで熟練技術者のモチベーションを高めるべきだ。書類重視の評価を見直し、ベテランが若手を育成できる状況に持っていかねば、真の若手育成にはツナガラナイ。
同時に、発注者側の技術者が工事の中身をしっかり把握し、理路整然と説明できれば、提出書類はおのずと減少するはずである。受注者同様、発注者にもスキルアップが求められている。