【災害対応+記者の眼】 市町村まで包括協定の効果拡大を
2016/12/15記者の目/論説
建設メール
大規模災害発生時における市町村支援方策を検討している国土交通省の有識者懇談会が15日、提言の骨子案を固めた。注目は地方整備局と広域的な建設業者が結んでいる資機材の支援も含めた包括協定の拡充で、効果を市町村まで拡大し、包括協定を締結する民間事業者の範囲を広げるとともに、地域の実情に合わせた個別協定の締結も促進していくべきとした。
多くの市町村では災害発生後、直ちに調査や測量・設計などを実施するための協定を民間事業者と結んでいない。そのため、今後は既存の包括協定に市町村を新たに加える方式や建設業協会等と締結する方式などを視野に入れる。
また、協定に基づき民間事業者が行う初動調査の有効性を広く周知することで、災害対応への理解拡大とともに、協定締結時に災害時の契約や業務時の保証といった必要事項も盛り込むことを提言する。TEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)による被災状況報告を受けて行う災害査定準備は、実際には測量・設計業者が無償で手伝っている場合がある。そこで査定設計書作成や災害査定など自治体が行う業務を災害復旧支援業務として委託することで、責任の所在を明確にする仕組みを検討していく。
災害査定以降の地方自治体の負担軽減に向けては、発注迅速化の取り組みやCM方式のような新たな発注方式のさらなる活用など、工事の発注方式の検討も必要とした。
さらに国からの支援強化に関しては、緊急対応に高度な技術が必要な災害復旧工事について国が代わって工事を実施するなど技術的支援ができる仕組みの検討を求める。
懇談会では本年度内に今後の防災に関する市町村支援のあり方の提言をまとめることにしている。
〈記者の眼〉
災害復旧支援業務は、これまで測量・設計業者が善意で行っていた、あいまいな部分を明確にしようというもの。建前上、自治体が行う業務ではあるが、正式にお金を払うことで責任の所在をはっきりさせる狙いもある。災害査定申請書の作成などが迅速・円滑に進むことで早期の復旧につながるとともに、自治体職員が被災住民への対応に専念できるというメリットも生まれる。過去の災害では被災自治体の知識・経験が不十分だった結果、災害復旧事業の対象にならない内容を申請し査定で大幅にカットされた例や、逆に災害復旧事業で実施できる箇所や内容を申請せずに復旧工事が十分に行われなかった事例が実際に発生している。自治体の職員数が減少する一方で、災害が頻発し激甚化している現状を鑑みれば、新たな枠組みの構築は必然といえるだろう。