〈耳寄り〉 訪日外国人旅行者数が2400万人超える
2017/01/10コラム
建設メール
2016年における訪日外国人旅行者数(インバウンド)が過去最高の約2404万人となり、2000万人を大きく超えたことが明らかになった。国土交通省の石井啓一大臣は10日の会見で「観光を地方創生の切り札、わが国の成長戦略の柱と位置付けてビザ緩和、消費税免税制度の拡充など、これまでにない大胆な取り組みを、国を挙げて矢継ぎ早に実行してきた結果」と説明した。
昨年3月にまとまった明日の日本を支える観光ビジョンでは新たな目標として「2020年訪日外国人旅行者数4000万人」を掲げた。今回の伸び率は22%で、一昨年の47%に比べれば下がったとはいえ引き続き堅調な伸びを示した。観光庁の試算では15年をベースに毎年15%ずつ伸びていけば目標を達成できるとしており、今後もさらなる旅行者数の増加が見込まれる。
国交省では民泊のルール整備や積極的な情報通信技術の活用による宿泊業の生産性向上にも取り組んでいる。また、文化財や国立公園など国内の豊富で多様な観光資源の活用をはじめとするインフラの大胆な公開解放をさらに進める考え。石井大臣は、外国人を含む全ての旅行者がストレスなく旅行できるように無料Wi-Fi、バリアフリーなどの環境整備に意欲をみせており、取り組みの強化が注目される。
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あくまでもインバウンド2000万人の突破は一つの通過点であり、新たな目標達成には全国各地に旅行者が訪れるような環境整備が欠かせない。観光庁が昨年末に策定した観光インフラ整備プログラムでは視点の一つに「観光資源の魅力を極め、地方創生の礎に」することが盛り込まれた。ただし、ハード面では鉄道駅のバリアフリー化や地方空港の機能強化、魅力ある公園や競技場等のインバウンド対応が目立つ程度。目標達成にはハード面の観光インフラ整備だけにとどまらず、インフラを機能させ、効果を高めるソフト面との一定的な取り組みが必要とされている。
大都市を中心としたホテルの建設着工数は引き続き好調で、民泊のルール整備も進んだことで旅行者の宿泊先確保問題は改善されつつある。しかし現実に4000万人を目指すとなると、人気観光地に集中する旅行者を適度に分散させることが不可欠だ。そのためには地域に眠る観光資源の掘り起こしが重要となり、地域をよく知る人々が立場を超えて積極的に連携する必要があるだろう。観光振興策が新たなまちづくりの「切り札」となる可能性は十分にあり、今後数年間が絶好の機会であるともいえる。