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【検証・ICTで効率化】 大野知事「二つの効果」／『見える化』で手戻り減／埼玉県
2024/09/30記者の目／論説
建設メール
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「埼玉県GIS」のオープンデータ（河川）
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作業の効率化や省人化など、ICT技術が職場環境にもたらす影響は大きく、少子高齢化が進むにつれて重要度はさらに増していく。建設業界においても公共工事などで技術導入が進む中、企業側は挑戦しやすい体制を求めている。日本工業経済新聞社は、本社と支局ネットワークを生かし、関東甲信越の状況をニュースの交差点「検証・ICTで効率化」と題し、全7回で紹介する。第1回は埼玉県。
埼玉県の大野元裕知事は8月末、ICT施工などによる建設DXで県内建設業が生産性を上げることの重要性を強調した。「二つの効果がある」と整理した上で、県内市町村や未導入の企業に浸透させていきたいとの思いを語った。
効果の一つ目は「建設業に対する悪いイメージを払拭する」ことだと言う。労働時間が長く休日も少ない、あるいは暑い現場で力仕事といった印象では、人がなかなか入ってこないのが現実。
二つ目は、それらの課題が例え改善できたとしても「急に入職者が増えていくということにはならない」ため、「人の力を必要としているさまざまな業務について、DXで代替する」という考え方だ。
知事は「もちろん若い方が来た方がいいが、来ないとしても、人のやるべき仕事を減らしていく。この両方の視点」を持つべきと唱えている。
県では建設会社や設計コンサルタント、測量会社などに対する側方支援の一環として、インフラ管理データのオープンデータ化を急速に進める。誰でも利用できる「埼玉県GIS」の使い勝手を良くすることに注力。6月から全ての県管理道路と、一部の河川の3次元点群データを公開した。ダウンロードもできる。
活用することで、例えば現場調査に足を運ばなくても、「現地の電線、ガードレール、樹木の状況がわかるなど、現場の位置関係が把握できる」（県土整備政策課建設DX推進担当）という。
一方、民間側に聴くと、ICT導入に積極的な企業は、最初に苦労した分、効率化のメリットを享受している。例えば建築設計県内大手のアルク設計事務所（さいたま市）の田中芳樹所長は「生産性が上がり、効率化につながっている」と言い切る。
「設計とは頭の中にあるものを表に出すわけだが、従来の図面ではなく立体的にすることで『見える化』できる」と強調。
さらに「デザインだけでなく、設備などの属性情報を紐付けることで、関係者が一目瞭然で建築物について理解できる」という大きなメリットがある。その際のポイントは、設計の前段階で負荷を掛けるフロントローディングにある。「最初に『見える化』することで、みんなが同じ認識を持った上で、次の段階に進める」。このため手戻り、手直しが減り、生産性が向上するというわけだ。
7月に就任した伊藤高副知事（前国交省道路局環境安全・防災課長）は「外注するのではなく、地場の会社が自社で使えるようになること」が大切だと捉えている。企業の取り組みに温度差があり、かつ「差が開いているのではないか」との問題意識を披露した。これから「小規模な県内施工業者にもメリットを感じてもらえるよう、意識醸成を図っていく」。
