〈耳寄り〉 ICT土工の全工程を学ぶ講習試行へ
2017/02/23コラム
建設メール
国土交通省がi-Construction(アイ・コンストラクション)の取り組みで先行的に実施しているICT土工について、起工測量から3次元データ納品までの一連の流れを座学と実習で学ぶ試行講習が、2月27日から3月4日までの日程で富士教育訓練センター(静岡県富士宮市)にて行われる。国交省の本年度補正予算で対象となった技能労働者の戦略的確保・育成支援事業で重点支援対象に採択された日本機械土工協会、全国建設産業教育訓練協会、キナンが計画する3つの講習の共同開催となり、ICT土工の標準教育となるモデルカリキュラムの策定を目指す。
ICT土工の全工程を対象に座学と実習を同時に行う講習は初の試み。標準教育のモデルカリキュラムを策定し、2017年度下期からの一般講習につなげたい考えで、試行講習の成果が注目される。
今回の講習は▽中部地方整備局富士砂防事務所▽日本建設機械施工協会施工総合研究所▽富士教育訓練センター▽日本マルチメディア・エクイップメント▽キナン▽キクトコーポレーション▽建設システム▽Dアカデミー▽平井測研―という発注者、受注者、ベンダーが実施に協力する。
富士砂防事務所の職員、地元建設業者の現場技術者や技能者、建機レンタル企業の関係者などが今回の受講者。座学の講習は各分野で気鋭の講師が担当し、フィールド実習は最新のICT建機と測量機、ドローンやレーザースキャナーを調達するなど、最先端の環境で行われる講習となる見通し。
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アイ・コンストラクション関係の講習は通常1日で、午前中に座学、午後から現場見学という場合が多い。また、ドローンやICT建機による施工に特化した講習が大半を占める。今回の講習の最大の特長は発注者、技術者、技能労働者などが全工程を約1週間かけて学ぶ点にある。例えばドローンに関しては受講者全員から実際に触って動かしてもらう。また、ドローンを操作したことがある人も、その後の工程を理解していないなど、全体の流れを把握することが難しいのが現状であるため、講習を通じて、それぞれの立場でICT土工の理解に役立ててもらう。
さらに労働安全衛生の講義も重要な要素となる。ドローンの場合は特に建設業以外から参入している会社も多く、ドローンを素手でつかむといった安全に対する基本的な素養が欠落している場合もあるため、建設現場では当然必要となる労働安全衛生の正しい知識を身に付けさせることも狙いだ。
今回はモデル性の高い取り組みとして国交省の補助があるが、通常は高額な講習費用が掛かってしまうことが大きな課題。今後、モデルカリキュラムの内容とともに、支援制度の充実を図ることができれば、モデル的な講習として全国にも波及する可能性がある。