〈壁耳〉 業務でも履行期限平準化の動き
2017/02/27記者の目/論説
建設メール
記者 国土交通省が業務の履行期限の平準化を図る方針を打ち出しましたが、狙いは何でしょうか。
デスク 簡単に言えば平準化が進む工事の発注に合わせて、設計などの業務発注の周期を見直すということ。工事では2017年度の当初予算からゼロ国債の活用が可能になったけど、ゼロ国債活用工事の発注には当該年度の中ごろまでに業務成果が納品されている必要がある。設計ストックがなければ工事発注もできないからね。
記者 それには3月に集中する納期を分散させる必要がありますね。
デスク 方法としては繰越制度や翌債を適切に活用することが一つ。関係機関や地元との協議の遅れ、現地の条件変更などが発生して当初の履行期間が延びる場合、必要に応じて年度を跨いでも適正な履行期間を確保するというもの。さらに設計成果等の納期の分散にも取り組む見通しだ。今は3月に納期の山場があるが、例えば国債等を活用して前年度下半期に契約し、9~10月に納期の山場をもう一つ作るという考えだね。そうすれば12月や1月に工事公告する準備期間を確保できるようになる。
記者 関係する業界団体も大歓迎でしょうね。
デスク 建設コンサルタンツ協会の幹部は「発注サイクル全体の大胆な工夫により、非常に良い方向に向かうだろう」と歓迎している。全国測量設計業協会連合会や全国地質調査業協会連合会の幹部も天候が良い4月や5月に現場で作業ができず、梅雨や台風の時期、降雪期に外で作業をしなければならない場合が多いため、その時期を回避した発注や作業が実現すれば「素晴らしいこと」と期待を寄せている。
記者 担い手の確保にもつながるのでしょうか。
デスク 重要な要素ではあると思う。各業界は総じて平均年齢が高く、年齢分布をみると45歳でも若い部類に入る場合もあるのが現状。平準化とは別の議論で総合評価落札方式の中で若手技術者の配置を促す取り組みを拡大する方向性があるが、そもそも若手がいない。設計業務の場合は特に、年度末の3月は多忙を極めるものの、4月から6月は仕事が少ない傾向にある。成果物の納期が分散される業務の平準化が実現すれば、労働環境や処遇の改善が一気に進む可能性が出てくる。同様の取り組みが地方自治体にも広がれば地方業者の環境改善にもつながるだろう。
記者 ニワトリが先か、卵が先かの議論のようですね。
デスク 確かにそうだが、そもそも若手が入ってこなければ話にならない。それには業界が魅力的に映らなければ意味がない。将来、業務の平準化が担い手確保の近道だったという結論になることを期待したいところだね。