【ICT土工+記者の眼】 地方自治体でも44件実施
2017/03/08記者の目/論説
建設メール
国土交通省が進めるICT土工に準じて、2016年度には地方自治体でも2月末までに13団体でICT土工が158件公告され、44件で実施されたことが国交省の調査で分かった。ICT建機のみ活用する情報化施工については25団体で73件実施されている。
また都道府県・政令市への聞き取り調査の結果も明らかになり、「小規模な土工事、都市部での工事への工事が多くICT土工のメリットが見えにくい。小型のICT建機がない」といった指摘が寄せられた。
さらに「小規模工事の方が工事価格の増加割合が大きく、理解が得られない」という予算に対する問題意識や、「監督・検査・積算等の要領基準類に関して分からないことが多すぎる。(各団体の)要領基準類に落とし込めていない」などの発注者の準備不足、「中小企業のICT対応状況に不安がある」という施工業者の設備投資や技術力への不安を指摘する声もあった。
国交省は地方自治体が発注するICT活用工事から選定したモデル工事を対象に導入支援を行う意向だ。ICT導入指導ができる者が所属する業界団体に対して国交省が発注支援業務を委託し、ICT選定、ソフトウェアの調達、活用を助言するなど、一定期間に限って支援することで、普及拡大へつなげていく。
国交省ではモデル事業を通じて得られた知見を地域の同業者に広く公開するとともに、発注者への理解を促すため積極的に現場を開放したい考えで、「自治体のモデル工事で職員が監督検査を行う現場を見せることが、発注者への普及の突破口となる」とみている。
〈記者の眼〉
地方自治体でICT土工を浸透させるためには都道府県の役割が非常に大きい。まずは都道府県が実施することで市町村でも取り組みやすい環境づくりにつながるからだ。全国建設業協会の幹部は、地域の建設業者でも十分に対応できるとした上で、担い手3法の改正と同様に都道府県が主導して理念を浸透させることで、市町村の意識も変わると期待を寄せている。また、国交省のICT導入協議会の議長を務める立命館大学理工学部の建山和由教授も「地方自治体の大半がICT土工を取り入れることで初めて普及したと言える」として、市町村への浸透が今後の鍵を握るとみている。国交省でも小規模土工への対応を図るため、必要な基準類を新設・改定する考えで、17年度には地方自治体による積極的な取り組みが一層進むことが期待される。