【低入札調査基準+記者の眼】 直接工事費の労務費算入率100%に
2017/03/14記者の目/論説
建設メール
国土交通省は2017年4月1日以降に入札公告を行う直轄工事を対象に低入札価格調査基準の運用を見直す。現場作業員の賃金等である労務費の算入率を、これまでの95%から100%に変更する。これにより直接工事費の算入率は現行の0・95から0・97に変更する。工事成績と落札率の関係を分析した結果、必要な見直しを行うもの。対象となる労務費は直接工事費の中で約3割を占める。
14日の会見で石井啓一大臣は低入札調査基準を17年度から引き上げる方針を示した上で、「例えば工事の基準については、建設業の働き方改革も考慮して労務費の算入率を100%に変更する。工事の内容にもよるが平均で予定価格の約90%とする。これにより公共事業の品質確保や賃金の適切な確保につながると考えている」と話した。
低入札価格調査基準の設定範囲は予定価格の70~90%に設定されており、見直しにより平均で90%に近づく見通しだ。
今回の見直しに伴い中央公共工事契約制度運用連絡協議会(中央公契連)モデルの改正も行っており、中央公契連モデルの改正が通知された後、地方自治体でも調査基準価格や最低制限価格の見直しが進むと考えられる。
〈記者の眼〉
基準見直しにより、実質的に基準値は上限に達したといえるが、重要なのは工事によってばらつきがある下限値を引き上げることで、これまで低かった工事でも上限値に近づく入札が増えることが予想される。また、現場作業員の賃金に当たる労務費を100%にしたということは、低い価格で入札した場合でも発注者としては下請けに入る技能労働者の適正な賃金を不当に切り下げることを認めないという意味を込めたことになる。ただ今回の見直しはあくまでも履行の可能性を保障する最低限の基準を引き上げただけであり、受注した工事で適正な利潤を確保するために、本来は90%以上の落札率で受注することが望ましい。落札率が低い工事は工事成績も低い傾向にあることから、今回の見直しで工事の品質確保が進むとともに、結果的に働き方改革の推進につながることを期待したい。