いまの課題を切り取る③ 入札後の未着工問題-「企業に損はさせない」
2015/09/01特集企画/PR
建設メール
公共工事を発注する際は、地元調整や工事用地の確保、関係機関協議を整えてから入札契約手続きを行うことが入札執行の基本となる。ただ現実には、途中段階であるにもかかわらず手続きに入ってしまう案件が少なからずあるという。
こうしたケースでいくつかの工事は、契約後も受注者が着工できない事態となる。現場管理費の増加や配置技術者の専任といった面で、受注者は損をしてしまっている。改善するためには発注者が「工事の一時中止」という手続きを適正に行う必要がある。
一時中止が特に多いのは、年度末に発注される補正予算関係の工事だといわれている。かつて国土交通省で事務所長などを経験した建設会社の土木部門の部長は「発注者の一部には補正予算工事の場合、入札手続きや現場での対応などで粗い対応をする人がいる」と明かす。当初予算の通常工事とは思い入れなども違うようだ。
緊急経済対策とセットで組まれることも多い補正予算は、政治的な色合いも強い。中央から地方に対して早期発注の大号令をかけられるケースが多く、概略設計段階で工事発注する「概略発注」も推奨され、発注者も多忙になる。そして、しわ寄せが受注者に行く構図となっている。
改正品確法では、受注者が適正利潤を得ることは発注者の責務と規定された。法改正を契機に、企業側が泣き寝入りしていたこれまでの常識を転換する必要がある。
一時中止について業界からは「受注者からも請求できるようにしてほしい」という切実な声がある。発注者が適正な手続きをとってくれないという実態の裏返しだろう。受発注者は対等という考えからすると、当然の要望といえる。
受注者が自身の責任ではない要因で工事施工不可と認識した際は、速やかに発注者と協議し、一時中止の手続きに入る。その際は、工期と金額について受注者が損をしないように変更することが重要となる。
【資料】 工事が一時中止になる代表例