【舗装マネジメントを考える①】 「目的を持って点検を」基調講演/国立研究開発法人土木研究所道路技術研究グループ上席研究員・藪雅行氏
2017/04/06インタビュー
建設メール
〈3月10日のセミナーから〉
舗装管理においては、他の道路構造物と同様に点検、診断、措置、記録のメンテナンスサイクルを確立し、長寿命化計画の策定・内容の充実などにより、舗装の長寿命化やライフサイクルコストの縮減を図る仕組みをすることが大切である。舗装点検要領は、メンテナンスサイクルの確立に向けたスタートとして、平成28年10月に国土交通省において策定され、舗装の構造的な特性や大型車交通量の多寡による損傷の進行の早さの違いに着目して、舗装種別・道路の特性に応じた点検方法等を規定している。なお、要領では、効率的な舗装管理を目的として道路管理者が既に実施している取り組みを妨げないことも規定している。
舗装点検要領に基づく点検を行う上でのメンテナンスの視点として2つのポイントがあげられる。1つ目は、舗装「路面」の管理という視点ではなく、舗装「構造物」の管理の視点で点検要領が作成されていることが挙げられる。表層のひび割れを放置し、雨水等の浸入により路盤が支持力を失うと舗装構造全体の損傷につながる。このため、路盤あるいは路床を傷めないよう表層のメンテナンスをすることが重要になる。2つ目は、舗装管理に「供用年数」の考え方を導入したことである。表層の修繕後、短期間で損傷が進行した舗装は、路盤等が損傷していることが考えられ、それを放置したまま表層を修繕しても、再び短期間で損傷が進行する。点検要領では、「使用目標年数」という表層を使い続ける目標期間の考え方を導入し、その期間より早く壊れている舗装については、その原因を究明し、原因に応じた適切な修繕を実施することを求めている。
舗装の点検は、点検することが目的ではなく、効率的な舗装管理を行うことが目的であり、点検結果を舗装管理の中でどのように役立てていくかを考えて実施していく必要がある。舗装の点検は、最初から100%上手くいくことはなく、点検した結果を検証して点検方法等を見直し・改善していくことを念頭に実施することが大切である。他の地域の取り組みを知り、参考とすることで、より良い舗装管理につながっていく可能性がある。各地域の取り組みを色々な場で情報発信していただきたい。