いまの課題を切り取る⑤ 女性活躍の取り組み-地域での就労拡大図れ
2015/09/01特集企画/PR
建設メール
人手不足に端を発し、国策として位置付けられたことで、さらに注目を集める「女性活躍」。少子高齢化で産業間の人材確保競争が激烈さを増す中、建設産業が今後も地域の守り手として使命を果たしていくためには、男性はもちろん、女性が入職し、働き続けられる環境の構築は不可欠だ。
国土交通省と日本建設業連合会など建設業5団体は昨年、現在10万人いる女性技術者を5年で倍増させる目標を打ち出した。女性登用モデル工事の試行など、実現に向けた具体的な取り組みも始まっている。
昨年度、関東地方整備局初の女性登用モデル工事を受注した高橋建設工業㈱(茨城県水戸市)。担当技術者として工事に携わった高橋順子代表取締役社長は「女性の視点、母親の感覚を現場に反映した」と振り返る。
現場事務所と別に女性用更衣室を用意。トイレも男性用と分け、目隠しで覆う配慮もした。現場を囲うフェンスネットは、子どもが触れても怪我しないよう、通常よりも端部が丸みを帯びた材質のものを使用。同工事の取り組みは出来栄えと共に高く評価され、局長表彰の栄誉に浴した。
目標の実現へ行政や中央団体が動き出した一方で、地域には戸惑いもある。とある団体幹部は「地域の中小企業に女性技術者はほとんどいない。そんな中、矢継ぎ早に施策を打たれても対応できない」と吐露。また別の幹部は「女性用の更衣室やトイレは、言うなれば現場事務所をもう一つ作るようなもの。発注者が必要経費を手当てすることが大前提」と訴える。
関東地整の浅古勝久技術開発調整官は「とりわけ地域に女性技術者が少ないことは認識している。ただ、だからといって何もしなければ始まらない」と踏み出した一歩の重要性を強調。柳田眞由美技術調査課長は「女性が働きやすい現場は、男性にとっても働きやすいはず」と断言する。
女性活躍の取り組みは、人手問題だけでなく、就労環境問題に対する回答ともなり得る。地域での拡大をいかにして図っていくのか。はたして倍増目標が達成された時、建設産業の新たな形が構築されているはずである。