【社会保険推進協議会+記者の眼】 自治体発注工事で対策徹底図る
2017/05/08記者の目/論説
建設メール
国土交通省は8日、建設業社会保険推進連絡協議会の初会合を開き、追加的な対策の実施と実態把握を進めることを柱とする本年度の取り組み方針を決めた。同協議会は社会保険加入の取り組みをさらに徹底させるため、従来の社会保険未加入対策推進協議会から衣替えしたもの。注目は地方自治体発注工事での対策徹底で、7月ごろに行う入札契約適正化法に基づく調査で積算における法定福利費の計上状況を調査し、結果に応じて法定福利費を確実に含めた積算の要請や、見込まない積算を行っている団体名の公表も予定。また、都道府県・政令市の発注工事では、直轄工事に準じて2次以下の下請工事まで社会保険加入企業に限定する対策を徹底する。
今月29日には都道府県を一堂に集めた会議を開催し、追加対策への理解を求めるとともに、6月以降、各ブロックで公共発注者対象の説明会を開き、市町村を含めて直接働き掛けを行う。併せて公共工事に参加する建設業者対象の説明会も行い、直轄工事の対策内容を周知する見通しだ。
さらに地域における優良な取り組みを推進するため、都道府県単位で業界団体や元請け・下請け企業が集まる社会保険加入推進会議を開催し、社会保険加入へ積極的に取り組む企業が守るべき行動基準の採択を目指す。本年度は複数の地域で試行的に実施する。
民間発注工事における対策も強化し、法定福利費の確保に向けて標準約款の改正に加えて、工事を受注する際に施工を社会保険加入企業に限定する誓約書のひな型を作成、活用することを検討する。
現場での社会保険加入の徹底では、建設キャリアアップシステムを活用した加入の確認方法や、保険加入について元請企業の下請企業に対する指導責任の強化を検討していく。
6月以降、昨年度までの5年間で講じてきた社会保険未加入対策の有効性を検証するための実態調査に入り、協議会で目標達成状況を検証した上で、結果を踏まえて社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインの改定も視野に入れている。
〈記者の眼〉
追加対策の実施に先立ち国交省が専門工事業団体等へ行った聞き取り調査では、「法定福利費を見積書に記載すると仕事が取れない」「未加入企業が価格競争上優位となり、ダンピング受注を行う結果、他の企業も同程度の水準に抑えられてしまう」との現状が依然としてあるため、技能者の社会保険加入を進めながら賃上げを行うことは困難という声が根強い。「技能者のことを考えて真面目にやっている会社が損をする構造を是正する必要がある」との意見が出るのは当然といえる。また、元請けによっては「内訳明示の見積書は公共工事のみで用いられるもので、民間工事では関係ないものと理解している」ことから、民間工事での取り組みが必要と感じている業者も多い。民間工事に対しては法定福利費確保へ標準約款を改正する方向性が今回打ち出された。まずは保険加入や法定福利費の支払いに対する公共と民間の発注者間の温度差を無くす必要があるだろう。