いまの課題を切り取る⑩ 中小の安全管理対策-現場事故は死活問題
2015/09/01特集企画/PR
建設メール
高齢化、引き抜き、若手確保など建設業界では依然として人材不足問題が深刻だが、ある程度の人材を確保した会社で新たな課題になっているのが安全管理対策だ。
ある地域で中小企業を経営する社長は、人材の少ない企業で工事事故が起こると死活問題になるために安全管理対策への徹底が必要だと言う。
業種や現場状況によって安全対策の手法・工夫は異なってくるが、社長の考える一番の安全対策とは「安全衛生担当者が第三者の目で確認し指導の徹底を行うこと。さらに会社内で客観的な目で見られるような体制を整え継続させること」
安全管理対策へのきっかけは、入職して数年経ち現場に慣れ始めた人員による労災事故だった。現場経験が少ない新入社員は事故を起こしやすいとイメージするが、慣れていないため逆に安全への配慮が高く発生しにくいと話す。慣れこそ禁物というわけだ。
「建設業における死亡災害」は平成15年から26年度を比較すると公共事業関係費が減り始めた時期と一致し約30%減少。しかしここ数年では横倍をたどっている。現在、人材確保に追われ入職を促進している建設企業は多く、入社した人材が数年後に工事事故を発生させるリスクは高くなるのではないか。
第三者の目と言える発注者も事故防止対策や講習会を実施しており、事故防止に積極的な発注者の一つとしては東京都水道局が挙げられる。都水道局は27~29年度の「水道工事事故防止アクションプラン2015」を策定。このアクションプランによる行動に、発注者が中小企業者の作業員教育への支援に関与していくことだと明記している。都水道局初の試みで7月には、受注者と発注者が一体となった講義・実践を織り交ぜてのバックホウの事故防止講習会を開催した。
行政も工事事故対策や未然防止につながる取り組みを行っているが、積極的な動きはまだまだ少ないと思われる。今こそ官民が一丸となり無事故無災害の実現に向けた取り組みを拡大していくことに期待したい。