言うに言えない本音、隠れた問題② 担い手不足本当の危機感-建設業が足を引っ張る
2015/12/01特集企画/PR
建設メール
日本建設業連合会(日建連)が今年3月にまとめた、「再生と進化に向けて―建設業の長期ビジョン」。2025年の建設市場に対して125万人の技能労働者が不足すると予想。90万人の新規入職者の確保と、35万人以上の(人員を確実に減らせる)省人化と高い目標に掲げている。
ビジョンを読み込むと、『もし目標が達成されければどうなるのか』が具体的に書かれていない。日建連の有賀長郎事務総長は「みんなでがんばろう、と言っているところに、うしろ向きなことは書きにくかった」と話す。ビジョンが実現されなければどのような未来が待っているのか。有賀氏に聞いた。
今、建設業界はそれなりに需要もあり、単価も上がっている。2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでは大丈夫だろう、とやや楽観的に構えている経営者もいるのではないか。有賀氏は「(今のままでは)5年後あたりから人材不足は本当に深刻になる。仕事があるかないかの以前に、(仕事が)あっても請けられない。廃業するしかなくなる」と指摘。
これは単にその企業だけの問題ではない。公共事業は、まず不調が増える。当然「予算を減らせ」の声は出てくる。今の段階でもすでに維持管理・更新を十分に行うことが難しい予算規模。「インフラのメンテナンスすらできない国になる」。そして言わずもがなの災害対策も進まない。
さらに民間工事は「それ以上に深刻。国の成長のためには一定規模以上の投資が必要。それができなくなる。建設業が国の経済成長を阻害する」。建設業が日本の将来の足を引っ張る「はっきり迷惑をかける」と強調する。
有賀氏は、最も大きな課題を経営者のマインドと言う。「この20年でデフレマインドが骨まで染みて縮小志向しかない。将来展望といっても来年ぐらいしか考えていない。1年1年を耐えてきた20年間があるので仕方がないとも思うが、このマインドを変えていかなければ」。それには今の危機的状況を正しく認識することが必要だ。
有賀氏は「(1755年の)リスボンの巨大地震でポルトガルは歴史から消えた。今後巨大災害も予想されており、日本もそうなりかねない」。それを乗り越えるためには、ビジョンの実現が不可欠。「今はまだ黄色信号。建設企業全部ががんばれば達成できる」。