言うに言えない本音、隠れた問題③ 見積採用価格明確に-実質歩切り問題解消を
2015/12/01特集企画/PR
建設メール
改正品確法の施行を契機に歩切りを根絶する動きが加速している。国土交通省や都道府県による働きかけが功を奏し、歩切りをやめる市町村が着実に増えている。ただ埼玉県内大手建設会社の部長は「特に地方自治体の建築工事で、積算段階での乱暴な歩切りがまだ残っている」と指摘する。
歩切りとは、積み上げた設計金額から最終的に予定価格を設定する際、金額を下げる行為を指す。積み上げる過程での金額カットは、言葉の上では歩切りに該当しない。いわば「実質歩切り」と表現できよう。
実態について前述の部長は「エアコンをはじめとする設備機器類やサッシなどは、メーカーから見積もりを取って積算している場合も多い。例えばA社が3億円、B社が2億8000万円、C社が2億5000万円の見積もりを発注者に提出したとする。ひどい発注者は、一番安いC社の価格から更に価格を下げて積算に使っている」という。
建設会社が入札価格を決めるためメーカーに問い合わせた場合、2億5000万円で発注者に見積もりを提出したと教えてくれるケースがある。そして「見積もりに出した価格より下げて取引することはできません」と言われてしまう。
このケースでは落札した瞬間から、適正利潤確保に足かせがはめられてしまっている。結果的に受注者が泣きを見ている。場合によっては、同じ役所の中でも担当者によって引き下げる金額の率が違う場合があるとの声も聞こえてくる。
発注者の認識はどうか。積算に詳しい担当者に聞くと「例えば電化製品でも、メーカーのカタログに掲載されている定価と、実際に家電量販店で販売されている価格とではかなりの開きがある」と考えている。
このように積算で採用する見積価格については、受発注者間で考え方に大きな隔たりがある。実質歩切りを是正するためには、各社の見積もりの平均を採用するなど統一的な考え方を確立し、採用価格を公開すべきではないだろうか。