言うに言えない本音、隠れた問題⑨ 測量設計業界の人手不足-賃金増や残業短縮を
2015/12/01特集企画/PR
建設メール
測量設計業界も人材確保・育成に頭を悩ませている。人手不足による測量設計従事者の心身疲弊は成果品の品質低下につながりかねない。実際に働く人々はどのような思いなのか。業界団体や県はどのような対策を取っているのだろうか。
ある測量設計業の経営者は、若者が数年で辞めてしまうケースが続くことに困っていた。仕事を覚えてきた頃に「辞めます」と言われる。理由は「公務員試験に受かったから」。同様の例は1人だけでなかったという。
ある市役所の建築部署に勤務する職員は、大学で設計を学んだ後に建設会社に就職。数年後に大手製造業に転職した。しかし海外への異動を恐れ、市役所の社会人採用に臨んだところ合格した。
こうした他業種や公務員への転職例とは異なるが、業界の厳しい就労環境を指摘する声もある。
11月12日に開かれた委託業界の若手技術者と長野県との意見交換会。参加者からは「給与が低い」「他産業の友人と比較して残業が多い。自分の時間がない」「休日出勤届けを出すことが当たり前」など不満が出た。
人材確保・育成に向けた対策も行われてはいる。
長野県測量設計業協会は、小学6年生対象の講座を行ったり、建設系学科の学生を対象とした測量技術指導を実施することで、測量設計の楽しさ・魅力を伝えている。
価格競争による厳しい経営も人材確保・育成を困難にさせている。特に長野県は落札率が低い。県の調査によると、設計業務の2014年度平均落札率は全国88.4%、長野県隣接8県90.6%だが、長野県は84.7%と下がる。
現状を踏まえ、県は委託業務の失格基準価格見直しを進める方針だ。落札率を上げることで、企業が賃金適正化など人材確保・育成につながる労働環境改善に取り組むことを期待している。
若者に興味を持ってもらうこと、生きがいを実感できること、労働環境を改善することが急務の測量設計業。課題は多い。