《連載①》 【地域建設業は想定外の災害にどう備えるか】「生かすべき複業の経験」
2017/08/07特集企画/PR
建設メール
新たな事業分野への進出や技術開発に取り組む全国の建設業経営者らで組織する建設トップランナー倶楽部(代表幹事・米田雅子慶應義塾大学特任教授)は7月4日、「地域建設業は想定外の災害にどう備えるか」をテーマに第12回建設トップランナーフォーラムを東京都内で開いた。全国各地で大規模な自然災害が頻発する中、地域の建設業としての備えの在り方を、行政の関係者や学識者を交えて話し合った。約300人が参加した。
米田代表幹事
フォーラムの冒頭、趣旨説明に立った米田氏は、「地震が少なかった地域で大地震が起き、北海道や東北を強い台風が襲うようになった」と、相次ぐ想定外の自然災害とその激甚化の問題を指摘した。そして、地域建設業に関して「発災時の初動対応や復旧・復興工事など地域防災の担い手としての役割がますます重要になっている」と強調。「農林水産業への進出など事業の複業化の経験や、ICTなど新しい技術の活用などを踏まえ、地域建設業としての災害への備えについて議論したい」とフォーラムの目的を説明した。
石井国交相
来賓としてフォーラムに参加した石井啓一国土交通相は、「建設業の使命は、国民生活や経済活動の基盤である社会資本や住宅の整備、維持管理などを通じて、国民の安全・安心を支え、経済社会の発展に貢献すること」と強調した。
そして「これからも地域の守り手である建設業が、使命感や誇りを持てるように、『給料』が良く、『休暇』が取得でき、将来に『希望』が持てる、『新しい3Kの魅力ある業界』になるよう支援に取り組みたい」と語った。
山本農水相
また、山本有二農林水産相が日本の過去の土木行政について、「いくつかの過ちがあった」と述べ、「その一つは地方にお金をかけなかったことだ」と指摘した。そして「その結果、首都に人口や価値が集中してしまった。私はアジアの国の指導者が来た時には必ず申し上げている。皆さんうなずいて帰られる。これは間違いなく日本が世界標準から劣っている点だと思っている」と話した。
高知県出身の山本氏は、南海トラフ巨大地震の被害想定で、高さ34・4㍍の津波が予想されている同県黒潮町について触れ、四国横断自動車道の建設工事に合わせ、残土を使って谷を埋め、役場や消防署を高台に移転させる計画を紹介した。
山本氏は「このように地方のアイデアで何とかしようとしている事例がある一方、どうにもならないことがある」と指摘。地域の建設業の収益が落ち、災害対応に必要な建設機械を所有できなくなっている状況を問題として話した。そして「この国を変える知恵を出していただきたい」と会場に訴えた。
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全国の建設専門新聞19社が参加する「地方建設専門紙の会」が取材した第12回建設トップランナーフォーラムの模様を連載します。(地方建設専門紙の会)
(つづく)