《連載⑧》 【地域建設業は想定外の災害にどう備えるか】「まちを守る協同組合設立」
2017/08/22特集企画/PR
建設メール
「想定外の災害」として真っ先に思い起こされるのが2011年に発生した東日本大震災だろう。その大震災では、膨大ながれきを地元の建設業者、解体業者、産業廃棄物処理業者が仙台市と一致団結して現地分別などにより迅速に処理し、国内外から高い評価を得た。この「仙台方式」を仙台建設業協会で先導した深松組(仙台市)の深松努社長は、災害の経験を踏まえて締結した各種防災協定の概要を報告した。
「東日本大震災後の仙台市地域防災協定」をテーマに講演した深松氏は、▽避難所などの安全を確認するための「地震災害時における避難所等の応急危険度判定に関する協定」▽大雪時に市民生活の安全・安心を確保するための「大雪時における道路の除雪・排雪作業等に関する協定」▽災害時に放置車両などを移動し災害応急対策を円滑に進めるための「災害時における車両等の移動に関する協定」▽大規模災害発生時に、仙台建設業協会、宮城県解体工事業協同組合、宮城県産業廃棄物協会仙台支部の3団体が相互に協力して復旧・復興事業に貢献するための「仙台市における災害時の相互協力に関する協定」―という四つの協定内容を解説した。
このうち「仙台市における災害時の相互協力に関する協定」は、仙台方式を実現した3団体が2015年3月、仙台市と締結。深松社長は「通常なら一緒になりにくい3団体が相互協定を結ぶことができたのは、地元だけでがれき処理をやり切った経験があったからこそ。仮に東日本大震災と同じような地震が発生しても、即座に対応できる」と自信をのぞかせた。3団体で「せんだい災害協定団」を組織し、がれき処理の初動期活動について震災で得た経験と教訓をQ&A方式でまとめた冊子を発刊したことにも触れ、その積極的な活用を呼び掛けた。
さらに、今年3月に仙建協会員を主体に「杜の都建設協同組合」を発足させ、除排雪やインフラの維持修繕などを包括的に受注し、組合員が共同で担う体制を構築したことを報告。政令市の建設業団体として初となる試みのきっかけは、「がれき処理の契約に当たり、仙台建設業協会は仙台市から一括で業務を受注することができず、双方の手続きが煩雑化した。一方、解体は協同組合だったため手続きが迅速に進んだ」ためという。
さらに深松社長は「仙台は35年周期で地震が来る。また台風や大雪に見舞われることもあるだろう。ただ今後、仙台では震災前より仕事が少なくなり、廃業する建設業者が増えることは間違いない。その時には誰がまちを守るのか。組合をつくっておけば、誰かが地域の安全・安心をカバーできる体制ができる。災害大国の日本にあって、少ない人間でまちを守るためにはこうした仕組みが欠かせない」とその意義を強調した。(地方建設専門紙の会)
(つづく)