【建設経済レポート】 新たな入札契約の導入は自治体で二極化
2017/10/27業界動向
建設メール
担い手3法の改正に伴い多様な入札契約方式の導入が求められる中、新たな方式の導入が一定程度進む一方で、導入に消極的な自治体が多く、二極化していることが、建設経済研究所が公表した「建設経済レポート」で明らかになった。都道府県・政令市・中核市等を対象に行ったアンケート調査の結果、段階的選抜方式や技術提案・交渉方式は、そもそも対象工事が無く、手続きの面でも比較的負担が多いことから導入が進んでいない。これに対して災害対応体制を評価する方式や若手技術者の活用を促進する方式については多くの自治体が導入、または導入に前向きであり、災害への備えや担い手の育成に対する関心の高さがうかがえる。
地域の社会資本の維持管理につながる方式では、「複数年度契約方式」「複数工種一括契約方式」「共同企業体による共同受注方式」があるが、導入する自治体は一部にとどまり、逆に導入しないとする自治体の割合が2年半前と比較して増えている。大半の自治体が理由として受注者の受注機会が減少することを挙げた。
地元の建設企業全体に対する受注機会確保への配慮は一見すると公平・公正だが、同研究所では「災害時に必要な建設機械を保有するなど求められる役割を果たすことができる地域の建設企業を持続的かつ安定的に存続させていくことも、公共工事の発注者であり地域防災を担う自治体の責務」と指摘。地元に精通した地域の建設企業を安定的な受注を図ることで存続させ、地域の社会資本を維持する時代へ転換していくことも担い手3法改正の趣旨に含まれていたはずであるとし、「今後、あらためて自治体でその趣旨についての認識が深まり、これらの方式の導入が進むことを期待したい」とまとめた。
また、今回初めて実施した施工現場の労働環境改善に関する取り組み状況の調査では、社会保険未加入業者対策や週休2日制の確保に向けた取り組みが、ある程度行われていることが確認された。同研究所では、働き方改革を通じて今後も建設業が魅力的な産業となるように、「発注者側である自治体にもより一層の取り組みが求められる」と期待を寄せている。