【論説・長野発】 若手技術者表彰にインセンティブを
2016/03/02記者の目/論説
建設メール
本年も長野県の各建設事務所で若手技術者等所長表彰式が行われた。若手技術者等所長表彰は、各建設事務所が発注した建設工事および委託業務に関係した技術者のうち、担当した工事や業務が優良かつ技術者の功績が顕著と認められる者を表彰する制度。制度に対しては建設業界団体から「総合評価落札方式における加点措置などインセンティブがほしい」という要望が出ている。しかし県は首を縦に振らない。なぜインセンティブを付与できないのだろうか。
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総合評価落札方式で加点措置のある『県優良技術者表彰』は建設部長を委員長とする委員会が審査する知事表彰。一方の若手表彰は受賞者選定を事務所長の裁量にまかせた表彰。このため判断する事務所長によって受賞者の技術レベルに差が生じる可能性もある。差があるにも係わらず同じ加点というのは問題がある。しかし若手表彰の対象者条件では成績点80点以上の工事(業務)成績評定点が必要とある。一定の技術レベルは得られているといえるだろう。
対象者は工事35歳未満、委託業務40歳未満の現場代理人や主任技術者、担当技術者(業務従事者)。ただし上記要件に該当せずとも『特に表彰に値すると判断された者』も対象となる。つまり若手でなくても受賞できるということで、このあいまいな点が同表彰制度の価値を下げている面もある。
また優良表彰を受賞した技術者は、若手表彰の対象外。つまり加点措置のある表彰を受賞できなかった技術者のみが応募できる。ならば若手表彰受賞者に対する加点は筋が通らないものとなる。
しかし仮に加点措置があれば、受賞者の会社への貢献度が上がることになる。自社内外での評価が上がり、さらに仕事への意欲、社会資本整備への貢献に対する意欲が湧くのは間違いないだろう。自分の取り組みが人に認められることは、今後も努力を継続する際の糧になる。また優良な若手技術者によって受注機会が増えるチャンスがあるならば、企業としても技術者育成に力を注ぐだろう。
若者が入職しない、入職してもすぐ辞めるという現象は、全国的に様々な産業で起きている。県内若手技術者を所属企業および建設産業から離脱させず、企業が本気で人材育成に取り組める一つの材料として、わずかでもインセンティブ付与というものがあっても良いのではないだろうか。
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県が加点措置をする予定は全くなく、インセンティブ付与は期待できそうにない。表彰式での、ある事務所長の言葉を紹介する。「若手表彰ではインセンティブはない。しかし表彰されるほどの仕事をしたことは素晴らしい。人生は長い。今後も技術を研鑽してほしい」。さらに2年連続若手表彰受賞者の言葉。「昨年の受賞を機に仕事のあり方を考え、その成果が出た」。加点措置の有無にとらわれず、技術者は受賞を誇りに努力を続けることが大切なのかもしれない。