〈建設論説〉 普段の現場に価値がある
2017/11/30記者の目/論説
建設メール
日本建設業連合会(日建連)が旧・日本土木工業協会時代から進めてきた市民現場見学会の参加者が、足かけ15年で300万人に達した。8万回を超える見学会を通じて延べ300万人に現場を見せた活動は、建設業の魅力を広く国民へ伝えることに大きく貢献したはずだ。
現場見学会を開催しているのは日建連だけではない。建設業団体をはじめとする多くの関係者が全国各地で多種多様な見学会を開いており、参加者も小さな子どもから高齢者まで幅広い。
普段は仮囲いの塀があり、関係者以外は見ることも入ることもできない建設現場を公開し、建設業の役割と、ものづくりの醍醐味を知ってもらう機会を設けることは非常に意義深い。だが、工期の関係や準備にかかる手間暇を考えれば現場見学会を開くのは簡単ではない。今後は見学会という非日常の場を効果的に活用しつつ、日常の現場から魅力を発信する取り組みの強化が求められる。
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見学会に参加して建設業に興味を持ち、入職につながった例は着実に増えており、担い手確保に向けた「きっかけ作りの場」として見学会は有効といえる。ただ見学会の直後に話を聞けば、将来の就職先として建設業を選択肢に上げる人が多くなるのは当然だ。重要なのは興味を持った人を逃さず入職させ、かつ長く働いてもらうこと。特に高校卒業後、せっかく建設業に入ったのに3年もたたずに半数近くが辞めてしまっては意味がない。
就職先に建設業を選んだ若者が、やりがいを持って長く働けるように、処遇の改善とともに日ごろから現場の魅力を高める意識改革を進め、理想と現実のギャップを埋める作業が不可欠となる。他の産業では得難い魅力がある裏には、厳しい現実があることも理解してもらわなければならない。
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建設業には大規模な建築物、構造物の建設といった地図に残る仕事の他に、地下構造物や埋設物のように地図には載らないものの重要な施設をつくる仕事もある。例え目立たない地味な施設であっても誰かがつくり、維持管理しているおかげで国民が安全・安心に生活し、社会経済活動を営むことができる。また、さまざまな人が関わって施設が完成していることも知ってもらう必要がある。
i-Constructionの推進によりイメージが変わりつつある今後の建設現場は、特に若者の目には魅力的に映るはず。現場にこそ建設業の魅力が詰まっている。毎日が見学会であることを現場で働く一人一人が常に意識し、世の中に対して積極的に情報を発信していく姿勢が大事になる。
自宅の近くや通勤・通学途中で見かける工事は、なぜ必要なのか。いつ、誰が聞いても答えが分かるような現場に、もっと変わっていくべきだ。