【新春インタビュー】 石井啓一国土交通大臣/生産性革命は「深化の年」に
2018/01/05インタビュー
建設メール
石井啓一国土交通大臣は2018年の新春インタビューで、建設業の働き方改革やストック効果の高い社会資本整備の計画的・重点的な推進、中小河川緊急治水対策プロジェクトの実施、所有者不明土地問題への対応などに力を入れる考えを示した。また、生産性革命については、本年を生産性革命「深化の年」に位置付けて、生産性向上につながる施策に全力で取り組む姿勢を見せた。
◇
―建設業の働き方改革と中長期的な展望について
石井 建設業が今後も役割をきちんと果たしていくためには働き手の減少を上回る生産性の向上と将来の担い手を確保するための働き方改革に取り組まなければならない。
働き方改革については、昨年8月に受注者・発注者の双方が守るべきルールとして適正な工期設定のためのガイドラインを策定した。今後ガイドラインが公共工事のみならず民間工事にも浸透して、より実効性のあるものとなるよう業態別の連絡会議を通じて検討を深めていきたい。
また、昨年7月には建設産業政策会議において、10年後も建設産業が生産性を高めながら現場力を維持できるように「建設産業政策2017+10」がとりまとめられた。本年も提言していただいた内容の実現と具体化に向けて着実に準備を進めていきたいと考えている。
建設人材の育成・強化については、技能者の就業履歴等を業界統一のルールで蓄積する「建設キャリアアップシステム」を秋から実際に導入し、最終的には約330万人の現場の全ての技能者が登録するように順次、広げていく取り組みをスタートさせる。建設業の従事者に必要とされる技能の習得を、ICTを活用して効果的・継続的に行う建設リカレント教育(学び直し)なども進めていくことにしている。
建設産業が若い人たちに語ることのできる産業となって今後ともインフラの整備や維持管理、災害対応など「地域の守り手」としての役割を果たし続けることができるよう、これまで進めてきた社会保険の加入徹底などに加えて、業界と一体となった取り組みを本年も強力に進めていきたい。
―今後の社会資本整備の方向性について
石井 ストック効果の高い社会資本整備を計画的・重点的に進めるためには安定的・持続的な公共投資の確保が何よりも重要だと思っている。18年度当初予算の国土交通省公共事業関係予算では、ここ数年間の流れを堅持して、前年度を20億円上回る5兆1828億円を確保することができた。
今後の防災・減災対策では、特に水災害について九州北部豪雨等の課題を踏まえてまとめた中小河川緊急治水対策プロジェクトに基づき、全国の中小河川において、今後おおむね3年間(17年度から20年度)をめどに緊急的にソフト・ハード対策を推進して、水防災意識社会を再構築する取り組みを加速していく。
無電柱化についても、無電柱化の推進に関する法律に基づく最初の法定計画である無電柱化推進計画をできるだけ早期に策定していきたい。
―生産性革命「前進の年」の総括と今後の展望について
石井 16年は生産性革命元年と位置付け、国土交通省生産性革命本部を設置して生産性向上につながる先進事例として20のプロジェクトを選び出し、17年は生産性革命「前進の年」としてプロジェクトの具体化を進めてきた。生産性革命は昨年12月8日に閣議決定された新たな経済政策パッケージの柱となるなど政府全体においても重要な課題となってきている。18年は生産性革命「深化の年」として社会全体の生産性向上につながる施策に全力で取り組むとともに、生産性革命の基礎にある小さなインプットでも、できるだけ大きなアウトプットを生み出すという考え方を国交省のあらゆる分野の政策に生かしていきたい。
i-Constructionについては政府全体として25年までに建設現場の生産性2割向上を目指している。16年度に直轄が行う大規模な土工でICTを導入し、17年度からは対象工種を舗装工、浚渫工に拡大、橋梁でもi-Bridgeの試行を行っている。
ICTだけでなくコンクリート工の規格の標準化や、ゼロ国債、2カ年国債といった国庫債務負担行為の活用による施工時期の平準化にも取り組んでいる。平準化については17年4月から6月期の閑散期における稼動件数が対前年度比1・2倍に増加したことを確認している。17年度の当初予算で初めてゼロ国債が計上され、18年度当初予算でも引き続き盛り込まれたので、閑散期の稼動件数の増加に一層努めていきたい。
―所有者不明土地問題への対応と空き地対策について
石井 所有者不明土地は全国的に増加しており、今後の高齢化社会を考えると、ますます増加してくるのではないかという懸念がある。一方で公共事業用地の取得などさまざまな場面で所有者の探索に膨大な時間、費用、労力が求められるという課題に直面しており、国交省のみならず政府全体としても、大きな課題だと受け止めている。まずは所有者不明土地の利用を円滑化するために、公共事業で土地を収用する場合の手続きの合理化を行うこと、さらには公園や広場など地域住民のための公共的な事業に一定期間利用することを可能とする新たな仕組みを構築していく。それから所有者の探索を合理化する仕組みの構築を内容とする法案の、次期通常国会への提出に向けて取り組んでいる。