〈建設論説〉 今後5年間を無駄にするな
2018/03/30記者の目/論説
建設メール
政府の働き方改革実行計画に基づき、建設業では労働基準法の改正法施行後5年間の猶予期間を置いて時間外労働の罰則付き上限規制が適用される。この5年間は長いのか、それとも短いのか。関係者の考え方に建設業界の命運がかかっていると言っても過言ではない。
主要な建設業団体では、5年間の猶予期間を待つことなく、長時間労働の是正に向けた自主的な行動計画を策定し、段階的な時間外労働の削減に取り組む方針を示している。
石井啓一国土交通大臣が3月20日に発表した「建設業働き方改革加速化プログラム」でも、猶予期間を待たず、長時間労働の是正、週休2日の確保を図る方向性が盛り込まれた。
建設業の働き方改革の大きな目的が将来の担い手確保にあることを関係者があらためて認識し、今後5年間で業界の本気度を対外的に示すために、できることから直ちに手を付けなければならない。
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公共工事設計労務単価の単価算出手法が変わり、大幅な引き上げが決まったのは今から5年前。その後、これまで単価の上昇が続いているのは周知の通り。単価が上がらず、下がり続けた当時の状況を考えると隔世の感がある。
また、社会保険未加入対策は、5年間の集中的な取り組み期間を経て、加入が大幅に進んだ結果、「機は熟した」として今後は社会保険未加入業者の建設業許可・更新を認めない仕組みとするための建設業法改正の検討に入る。5年前に、この状況を予想していた人がどれだけいただろうか。
石井大臣が「建設業の働き方改革への私どもの本気度を示すもの」と強調する加速化プログラムでは建設キャリアアップシステムについて、おおむね5年で全ての建設技能者の加入を進めることにも言及した。ここでも5年が一つの目安となる。
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国交省の幹部は、「5年の猶予があるということではなく、5年の間に他の産業に追いつかなければいけない」と指摘する。ある業界団体の幹部も「この機会を逃せば現場の改善はできない。まだ5年あるのではなくて、たった5年しかないというつもりで取り組む」と危機感を示す。
5年後の2023年には東京オリンピックはとっくに終わり、元号も平成ではなくなっている。将来のことは誰にも分からないが、建設投資の減少に歯止めが掛かった今こそ、受発注者を含めた関係者全員が危機感を共有し、長年の慣習からの脱却に向けた一歩を踏み出すべきだ。
5年前から建設業界が本気で働き方改革に取り組んだからこそ週休2日が当たり前になり、担い手も確保できている―。そんな明るい未来を描くために、5年間を決して無駄にしてはならない。