<記者の目> 半年間をチャンスに/建設キャリアアップシステム
2018/08/10記者の目/論説
建設メール
建設産業の基本的なインフラとなる建設キャリアアップシステムは、本運用開始が当初計画から半年間延期されることが決まった。他の産業では例が無い、業界横断的に就業履歴などを蓄積する大掛かりなシステムを一から開発することもあって、システムに組み込む機能の設計・開発に当初の想定よりも時間が掛かってしまったことが大きな要因だ。
現場では技能者、元請けおよび下請け事業者が、それぞれの立場からシステムを利用し、入場する技能者の数やインターネット環境など、さまざまな条件が異なる状況が想定される。そのため一定の確率でエラーが発生することも織り込んで、段階的な導入を図るための限定運用を通じて、トラブルを検証し、その結果をシステムの運用に反映させるという。
技能者情報や事業者情報の登録申請とシステムの普及・啓発を進めてきた建設業団体は、スケジュールの見直しについて「ある程度はやむを得ない」との姿勢を見せる。一方で「スケジュールの変更がシステムそのものに対する信頼性を損なう危険性がある」との指摘も出ており、これ以上の変更は認められないとの思いがあるのは間違いない。ただし「期間が半年延びることは、チャンスと捉えるところは捉えて」「時間を与えてもらったと前向きに考えることもできる」といった半年間を有効に活用するべきとの意見も目立つ。実際にシステムが動き出してから考えるという「様子見」の技能者が多いことも事実であるが、半年間延びたことによってエラーのない、安心で円滑なシステムが万全な状態で機能し、システムに対する正しい理解が広がれば、登録に弾みが付く可能性もある。その意味では大規模な現場だけでなく、一般住宅の建築やリフォームなど小規模な現場でも限定運用を行い、しっかりとした検証を行う必要があるだろう。
同システムは稼動させることが目的ではない。これまで成し得なかった技能者の処遇改善につながる有効な手段の一つとして同システムの活用が必要であることを忘れてはならない。