《連載⑤》 【地域のインフラメンテナンス】「人や機械を共有資産に」
2018/08/20特集企画/PR
建設メール
栃木県那須地区の41社で構成する栃木県北建設業協同組合では2011年度以降、栃木県発注の「道路及び河川等維持管理統合業務委託」を組合として共同受注している。栃木県大田原土木事務所管内の全ての道路、河川、砂防施設の維持管理業務と道路除雪業務を包括的に受託することで、年間約3億5000万円から4億円の安定受注につながっている。近年は環境省発注の指定廃棄物保管状況改善工事や県発注の災害復旧工事の受注実績も積んでいる。
同組合が共同受注を目指した背景には、公共投資の削減と民間投資の抑制による仕事量の減少により、地元建設業者の経営状況が悪化したことがある。特に人材の確保や機械保有が難しくなり、東日本大震災発生時には災害時の緊急対応に支障があることが明らかになった。
同組合の星豪紀広報委員長は「共同受注を目指した経緯は全国的に一緒だと思う。有事対応や組合員それぞれの経営の安定、地域建設業の存続が難しくなってきたという状況の中で、協同組合による共同受注、官公需適格組合の認定による発展という活動を始めた」と話す。
実際に共同受注を始めてみると「全体的な受注量が確保された。会員の会費が削減できた。協同組合の財務内容が改善された。会員における高齢者の技術者を組合で再雇用することができた」と多くのメリットがあったことを強調する。他にも道路や河川などの維持管理、除雪情報などの一元管理を通じて「一社一社が対応している中では横の連携は生まれなかったが、協定を結び、人や資材、機械を組合全体で共有資産として使用できる」ことが大きいという。
同組合の取り組みは、地域建設会社の経営安定に共同受注の手法が効果的であり、1社では困難なことも組合としてカバーすることによってサービスの向上と地域建設会社の存続が可能になることを証明した。地域の建設業団体には、存続のために時代に合った変化が求められる。星氏も地方の建設会社各社の規模が縮小する中にあって「地域建設業団体の真の存在意義を考え、再編する時期ではないか」と訴える。
今後については、共同受注の対象を管内の国や県、市町村の施設の維持管理やメンテナンス、点検業務に拡大することで、より安定した地域建設業者の受注量確保を目指す。また公共住宅や公園施設、公共体育施設などの一括管理者への参加準備なども進める見通しだ。星氏は「私たちは夢と希望の持てる建設業を目指すということで、このような取り組みを行っている。同じ様な状況で取り組みを実施している団体は全国にもあると思う」とし、交流を促進させて情報共有と、さらなるサービス向上を図る考えを示した。(地方建設専門紙の会)