《連載⑩》 【地域のインフラメンテナンス】「災害経験から技術を磨く」
2018/08/27特集企画/PR
建設メール
第3部「未来づくりとICT」のアドバイザー総括では、国土交通省大臣官房建設流通政策審議官の青木由行氏がフクザワコーポレーション(長野県、福澤直樹社長)、林野庁森林整備部長の織田央氏が山善(神奈川県、山本善一社長)の事例発表を中心にそれぞれコメントを述べた。
軍事力や情報産業分野などで成長してきた米国をモデルに強い組織づくりのあり方を説いたフクザワコーポレーションの発表について、青木氏は「日本の特徴としては昔から災害に見舞われてきた長い歴史を持っている。災害自体は良いことではないが、災害を起爆剤に発展してきたのは事実だ」と述べた。
具体的には、雲仙普賢岳の災害で初めて導入され、東日本大震災や熊本地震などで使われた無人施工の技術や、災害復旧の円滑・迅速な推進に対応した復興PPPやCM、ECIなどの入札契約方式を説明。「災害の経験をマネジメントしていろんな技術を磨いてきたことを押さえておきたい。各国にはそれぞれが持つDNAがあって、その強みをいかに生かしていくかだと思う」と訴えた。
元請け下請け構造に関し、事業量減少に伴う下請けへの外注化にも触れ「ある元請け企業は、直用部隊を抱えており、現場の工程管理で明確になったクリティカルパスに対し、他の現場から人を一時的に投入してクリアしていると聞いた。人手不足など問題があるが、このような取り組みも新しい姿」と紹介した。
さらに生産年齢人口の減少について「あまり悲観的になるのもいけない。人手不足で建設業は賃金が上がりやすい環境になっているはず。業界全体の利益確保を考えた時、売り手が強い環境を持続していくことが大事だ」と持論を展開した。
織田氏は、神奈川県森林土木建設業協会が県と締結した林道等災防止支援活動協定を「林道点検や応急対策など地域への貢献は大きい」と評価した。
特に、平時の林道巡回パトロールは損傷個所に早急に対処でき、「平成28年の台風では、岩手県や北海道で早期に林道が代替路として機能し、地域の孤立を真逃れた」と説明。緊急時の備えが重要と言い、山善の取り組みが他地域へ水平展開されることを期待した。
ICTについては、森林林業分野でも取り組みが始まり、UAVなどを使った森林資源情報の把握、クラウドによる山林境界の確認など、森林整備の効率化に役立っている。「その結果、林業就業者に占める35才以下の若齢者も増え、女性も入職していきている。ICTは人材育成・雇用確保にも密接につながっていくと感じている」と述べた。(地方建設専門紙の会)※登場者の肩書きは6月29日時点のものです。