【国土交通省就任インタビュー】 土地・建設産業局長 野村正史氏「建設業法改正目指す」
2018/09/13インタビュー
建設メール
国土交通省土地・建設産業局長に就任した野村正史氏は、建設業が直面する課題に対して「一つ一つ丁寧に、しかし着実に取り組みを進めて、関係者とともに克服していかなければならない」との考えを示す。また建設業法改正に向けて「次期通常国会への(法案)提出を目指しながら作業を進めていく」としている。
今後の建設産業政策のうち、工期設定の問題については「請負契約における工期を契約の本質かつ重要な要素として法律に位置付けられないかという問題意識がある。例えば工期に関する基準の明確化、受注者による工期ダンピングの禁止、発注者側の不当に短い工期による請負契約の禁止、違反に対する勧告などを考えている」と話す。
社会保険の関係では加入を建設業許可・更新の要件とすることに加え「下請け代金のうち労務費相当分は現金払いとするような制度的な位置付けをしたい」と説明。地域建設業の持続可能性確保に関しては「経営管理業務責任者の要件緩和や円滑な事業承継のための制度創設を検討している。地域の建設業が受け継がれていくための方策を考えたい」と語る。
働き方改革関連法の成立により、今後は建設業でも時間外労働の罰則付き上限規制の一般則が適用される。野村局長は「5年の猶予はあるが、そんなに長い時間ではない。建設業の生産システムそのものを大きく変えていくために、民間工事も含めて働き方改革の状況を作っていくのは大変な作業になる。課題を乗り越えるための基礎的な条件をさまざまな立場の人が理解することが必要」と指摘。さらに「全体的な処遇改善も重要で、元請けや技能者を直用する専門工事業だけが頑張ればいいということではなく、全部連鎖した問題。注文者にもその意識を持ってもらい、払われるべきコストがあることをきちんと認識していただく。地道かつ着実に努力を惜しまずやらなければならない」と強調する。
来年4月の本運用開始が決まった建設キャリアアップシステムに対しては「業界団体の期待に応えるためにもシステムの信頼性を担保することが大事。まだ周知が足りないので、機会を捉えて最終的には日本の建設業を支える一つの大きな基盤になるということへの理解を求めていきたい」との姿勢を見せる。
【略歴】のむら・まさふみ
1985年東大法学部卒、建設省採用。国交省土地・建設産業局不動産業課長、総合政策局総務課長、大臣官房政策評価審議官(兼)大臣官房秘書室長、水管理・国土保全局次長、国土政策局長を経て本年7月31日付で現職。61年8月生まれ。57歳。富山県出身。