【国土交通省就任インタビュー】 港湾局長 下司弘之氏「海上作業で生産性改善」
2018/09/27インタビュー
建設メール
国土交通省港湾局の下司弘之局長は就任インタビューで「海上分野は特に生産性の改善を生み出す余力が残っている。海上という特性から取り組みが難しかったところができるようになってきたので積極的に進めていきたい」との考えを示した。
港湾分野におけるICT導入では先行して浚渫工に取り組んでいる。「従来は掘り残しがないか点検しながら掘るため、時間と手間が掛かっていたが、確認しながら施工できるようになれば生産性が一気に上がる」と説明。また「同様の効果が期待できる海上作業は多い。GPS測量の精度が上がり、海底の測量も3次元でできるようになった。ケーソン据付け、矢板や桟橋の杭の打ち込みが数㎝の精度で海上でも行えるため、生産性が劇的に上がることになる」と強調する。さらに「海の中で見えない部分があり、構造物としては合理的だが施工が難しい場合、施工手順を確認しながら設計ができる時代になってきている。ぜひ進めていきたい」と意欲を見せる。
今年は豪雨、台風、地震と災害が連続で発生した。「港湾施設で決定的なダメージを受けるような被害は発生していない。過去に取り組んできたことが功を奏していると思う。ただ各所で施設の被害は多発しているので早急に復旧させることをまずはやりたい。従来の公共事業の範疇ではカバーしきれない部分でも被害が出ているので、支援策の検討に取り組む」と話す。施設の老朽化に対しては「今の段階で50年が経過したものが2割、今後20年でそれが7割くらいになる推計値が出ている。この20年間でしっかりと対策を講じなければならない。できるだけコストを抑えながら機能を維持していきたい」と語る。
働き方改革の推進に向けては「海上工事は天候次第という面がある。まずは発注者と受注者が情報共有して工事計画を立てることを現場でやっていただきたい。また危険な海中での作業が多いので、ITの力を借りて遠隔作業化を進める。安全を確保するとともに作業環境の改善につながるような取り組みを独自のテーマとしてやっていく」と力を込めた。
【略歴】げし・ひろゆき
1985年京大大学院工学研究科修了、運輸省採用。国交省関東地方整備局副局長、大臣官房技術参事官(港湾局担当)、防衛省大臣官房審議官、内閣官房内閣審議官(内閣官房副長官補付)内閣官房国土強靭化推進室審議官を経て本年7月31日付で現職。59年8月生まれ。59歳。兵庫県出身。