【高校生作文コンクール③】 土地・建設産業局長賞「建築の魅力に関する一考察」
2018/10/19業界動向
建設メール
◎堂本美帆さん(愛媛県立松山工業高等学校建築科3年)
建築の魅力って何だろう。そう考えたとき一つの文章が思い浮かんだ。『この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とする。』これは建築基準法第一条の文である。私はこれを初めて読んだとき、それまでただの「タテモノ」の概念でしかなかった建築への見方が、百八十度変わった。建築の仕事の重要性と魅力に改めて気付いた瞬間であった。
私が思う建築の魅力は主に三つある。一つ目は、建築工事がいくつもの連携プレーで成り立っているということだ。例えば、地盤調査や基礎工事、型枠組み立て、コンクリート打設、そして各部材の組み立てや内外装の仕上げに至るまでを、一人の職人が作業することはない。各工程に専門の技術者がおり、連携しながら工事が進められているのだ。ゆえに、どんな小さな建物でも随所に職人たちの技術が生きている。
そして、その中のどれ一つとして欠かすことはできないもので、建築はこの連携があってこそ成立するものだと思う。二つ目は、建物が完成した後のクライアントの笑顔だ。家を建てるというのは、もしかしたら人生で一番大きい、かつ一生に一度きりの買い物かもしれない。人は家を建てることで夢とその後の人生を買うことになる。ならば、建築士は施主の夢と人生を背負っていると言えよう。施主の夢や理想を形にし、完成した瞬間に立ち会うことができて、その家族の笑顔に出会える最高の仕事だと思う。将来、建築士としてそこにいることが私の夢だ。三つ目は、建築基準法第一条そのものである。建物は、人の生命、健康、財産を守るためにある。建築士は、施主の今までの家族のライフスタイルを壊さぬよう、また将来変化していく各個人の生活にも対応し、安全安心で、かつ快適な空間を設計する。つまり建築とは、ただ「建てる」のではなく、人生を設計することなのだと思う。これほど壮大なスケールの職業は他にないのではないだろうか。
私たちは、しばしば建築という分野を「芸術」のくくりに含めることがある。しかし、ただの芸術ではない。建物を利用する人のことを真剣に思い、デザインを考え、あらゆる職人の技術をもって一人一人の人生を設計する。これほどハイレベルな芸術は、他に思いつかない。また、ロボットの技術が進歩していく中で、建築士の仕事はロボットにどれだけ任せることができるだろうか。唯一心を持っているあの青いネコ型ロボットならまだしも、施主の気持ちに寄り添い、意見を取り入れ、それを形にしていくことは、ロボットには不可能だろう。建築とは、ただの「タテモノ」ではなく、「人の生命、健康、財産を守る生活の器」なのだと私は思う。