【国交省が通知+記者の眼】 業界団体へ法令順守の徹底求める
2018/10/24記者の目/論説
建設メール
国土交通省は23日付で、建設業関係109団体に対して国土交通事務次官名で建設業界における法令順守の徹底を求める通知を発出した。業界団体に国土交通事務次官名で通知を出すのは2007年3月以来で、国民からの信頼に立脚した建設産業の健全な発展につなげるため、独占禁止法(独禁法)などの法令違反や、その疑いを招く行為が行われないよう、傘下の事業者に対し全ての従業員一人一人にまで法令順守の意識が浸透する体制の確保や取り組みの徹底を求めた。
近年、独禁法や刑法などの法令違反により、建設業者が刑事責任を問われる、あるいは行政処分を受ける事案が少なからず発生している。またリニア中央新幹線建設工事で受注調整があったとして大手建設業者が独禁法違反で起訴され、今月22日には大林組と清水建設の2社が有罪判決を受けたところ。
建設業界では過去の不祥事の反省に立って法令順守の取り組みを強力に進めてきたにも関わらず、法令違反等が発生していることに対し、通知では「社会資本整備の担い手として、わが国経済の発展を支える建設業界に対する国民からの信頼を損なうものであり、あってはならないこと」と指摘。法令違反の発生は建設業界全体の信頼を揺るがす重大な課題と認識し、さらなる法令順守の徹底に全力を挙げて取り組むよう要請した。
〈記者の眼〉
今回のような通知を国交省が事務次官名で出すのは異例だ。前回の通知は名古屋市発注の地下鉄工事を巡る談合事件を受けたものだが、建設業界を取り巻く環境は11年前とは大きく異なる。特に東日本大震災をはじめ相次ぐ災害復旧に尽力する建設業界の姿を見て、その必要性を国民が理解するようになった。社会資本整備や災害復旧といった極めて公共性の高い役割を担う建設業界は、まさに「国民からの信頼」を得ている業界であり、他産業以上に法令順守の徹底を望んでいる国交省の思いが通知から読み取れる。どの業界であっても法律は守って当たり前。だが一部あるいは一人の法令違反により、業界全体の印象が悪くなってしまうのも事実である。だからこそ業界に携わる一人一人が、あらためて法令順守を意識し直す必要があり、ひいては健全な業界の発展につながるはずだ。