〈壁耳〉 統計資料をどう見ればいいのか?
2016/04/07記者の目/論説
建設メール
記者 建設業界の各種施策を考える時、当然背景として現在の建設市場を知る必要があると思います。建設業の動向を調査する統計資料はさまざまありますが、どのように見ればいいのでしょうか。
デスク 統計ごとに特色があって、公共・民間工事全体の動向を知りたければ、国土交通省がまとめている建設工事受注動態が適している。これは1万2000社を抽出して1件あたり500万円以上の土木工事、1件あたり5億円以上の建築工事の受注動向を聞いて、そこから建設業全体に復元するという作業で受注額を出している。また、国交省は大手50社を対象にした調査も実施している。あと、日本建設業連合会(日建連)は会員企業を対象に受注動向をチェックしていて、これも公共・民間それぞれの状況が分かる。ただ、これらは大手の動向なので、中小の状況までは見えない。
記者 公共工事の動向を知りたい場合は
デスク 保証会社がまとめている保証取扱高から見た受注動向が一番参考になると思う。これは国、都道府県から地方自治体までほとんどすべての公共工事が含まれる。公共工事の場合、当たり前だけど予算とリンクした結果になるので、全体を見ると公共工事の予算規模と同じようなグラフになるだけで、あまり面白くない。地域別や都道府県別、工事規模別などできるだけ細かく切り取って見た方がいろいろな分析ができる。
記者 民間工事の動向は何を見ればいいのか
デスク やっぱり、まずは国交省の建設工事受注動態。公共工事、民間工事それぞれについて分けて結果を出しているので、この民間工事部分を見ると動向が分かる(=下のPDF参照)。そのほか、国土交通省では、民間工事の着工状況も調査しており、これで住宅・非住宅の状況が分かる。ただ、これは着工状況なので受注状況とはタイムラグが発生する。そこは注意が必要。あと、補足的なものとして、セメントや生コンの動向をそれぞれの業界団体が出している。もちろん、セメントも生コンも公共工事にも使われるが、半分以上は民間なので補足資料には十分なる。そのほか、帝国データバンクが出している景気動向調査や倒産状況といった、民間のシンクタンクの統計資料も参考になる。統計調査は、それぞれ特色があるので、1つを見ただけでは分からない部分がある。複数の調査結果を横断的に見ていくことで全体像がつかめてくる。
各種統計から見た民間工事動向