〈建設論説〉 建設業者は災害の経験を語れ
2018/12/28記者の目/論説
建設メール
2018年は大規模な自然災害が猛威を振るい、各地に甚大な被害をもたらした。いずれの災害でも「地域の守り手」である建設業者が緊急対応や応急復旧に当たった。その姿は被災者の目には頼もしく映ったに違いない。
11年3月に発生した東日本大震災からの復旧・復興は、地域建設業の献身的な活躍抜きには語れない。自らも被災者でありながら未曾有の災害に立ち向かった姿勢は、日本の建設業が世界に誇るべき姿でもあった。早いもので来年3月には震災から8年が経過する。大事なのは人々の記憶を風化させないこと。あの時に何が起こり、何が大変で、何をすべきだったのか。現場の最前線で災害と向き合った地域の建設業者だからこそ語れることがあり、それが使命でもある。
地震、風水害、雪害など災害の現場には常に建設業者がいる。大きな災害が相次ぐ今こそ、自らの経験を世の中に伝え続けることが今後の被害軽減に役立ち、ひいては地域建設業の存在意義の再認識につながるはずだ。
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国土交通省の元事務次官で震災時に東北地方整備局長として災害対応を指揮した徳山日出男氏は、地域建設業者の献身的な働きを目の当たりにし「以前はコンクリートから人へと言われ、本当に建設業はいらないというムードだったが、大きく潮目を変えた。建設業の真骨頂が見えた瞬間だった」と振り返る。
ただ18年に相次いだ災害に対しては「想定外の災害は起こるという東北の経験が伝わっていなかった」とし「命懸けで戦った皆さんだからこそ、教訓も語り継がなければならない」と伝承の重要性を強調する。貴重な経験も後世に伝わらなければ無駄になる。
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災害発生時には、いち早く現場に駆け付け、懸命に復旧活動を行っているにも関わらず、建設業者の活動が広く報道されない状況は依然として改善されていない。だが情報通信技術の発展に伴い、今や誰もが簡単に情報を発信できる時代になった。
災害の現場で何があったのか。その語り部は実際に対応に当たった建設業者こそがふさわしい。特に日頃から地域に密着した仕事を行っている地域建設業者は、地域のことを知り尽くす町医者であり、守り手でもある。今後は、さらに経験と教訓を伝える伝道師としての役割も積極的に担う必要がある。縁の下の力持ちが、もっと日の目を見るべきだ。