〈建設論説〉 平準化は待ったなしだ
2019/01/31記者の目/論説
建設メール
建設業で働き方改革が本格化する中、地方自治体を含めた公共工事発注者による施工時期等の平準化が進みつつある。国土交通省では、特に発注規模が大きい市区町村を対象に債務負担行為を活用した積極的な対応を促すなど発注時期や工期末を分散し、受注者の繁閑の差を減らす取り組みに理解を求めている。
また現在開会中の通常国会への提出が見込まれる公共工事品確法改正案では、地域における公共工事の施工時期の平準化を図るため、債務負担行為や繰越明許費を活用した翌年度にわたる工期の設定などを「発注者の責務」として規定する見通しだ。地方自治体から要望が多かった施工時期の平準化を法律上、明確に位置付けることで、自治体の平準化に向けた取り組みを強力に後押しする狙いがある。
現行の努力義務が発注者の責務に変わることで、いよいよ平準化は「待ったなし」の段階に移る。だが法改正を待たず、年度末までに、まだまだ実施できることはあるはずで、議会を含めた自治体の姿勢が問われている。
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国土交通省などが本年度に行った入札契約適正化法等に基づく実施状況調査によると、昨年8月1日時点で債務負担行為の積極的な活用や速やかな繰越手続き、積算の前倒し、発注見通しの統合などに取り組む自治体が着実に増えている。
注目された債務負担行為の活用は増加傾向にあるものの、大幅な伸びを示してはおらず、残念ながら自治体間で取り組みに差が見られる。発注体制や地域の実情が異なるため全自治体一律の実施というのは難しいが、財政担当部局や議会からの理解を得て、平準化に積極的に取り組む先進的な自治体も出てきた。
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品確法改正で注目されるのは、調査・設計の品質確保も、公共工事と同様に法律の対象に位置付ける点で、今後は調査・設計の発注・施工時期の平準化も発注者の責務となる可能性が高い。国交省では2019年度当初予算で初めて業務でもゼロ国債を設定し、平準化に取り組む仕組みを整えた。時代は確実に変わっている。
債務負担行為やゼロ債務負担行為等の活用に当たり、依然として議会承認など事務手続きに時間と手間が掛かるという意見も目立つが、発注や施工時期の平準化は発注者にとっても入札不調・不落対策、事務作業の一時的な集中回避という効果がある。
重要な工事の入札が不調・不落となり、受注者がいないことに気付いてからでは遅い。財政担当部局の理解もさることながら、議会も平準化の重要性を認識し、もっと業界の声に真剣に耳を傾ける必要がある。平準化を阻害する要因が「従来の慣習」であるならば、一刻も早く打破するべきだ。