【設計労務単価+記者の眼】 全職種平均で1万9392円/公表開始後の最高値に
2019/02/22記者の目/論説
建設メール
国土交通省は22日、3月から適用する公共工事設計労務単価を明らかにした。国交省等が本年度に行った公共事業労務費調査に基づき決定したもので、全国全職種(49職種)の単純平均は前年度比3・3%上昇、加重平均では同比4・1%上昇となった。単価の大幅な引き上げが行われた2013年度以降、7年連続伸びており、全国全職種の加重平均値は1万9392円で、単価の公表を開始した1997年度以降では最高値となった。※労務単価の推移は添付の資料参照
今回の公表から、単純平均の伸び率に加え、都道府県・職種別の単価を標本数により重み付けした加重平均の伸び率も示しており、単価は7年間で単純平均では48・0%、加重平均で48・3%上昇したことになる。
ブロック別の加重平均の伸び率は九州・沖縄が6・0%増で最も高く、関東が4・2%増、北陸が4・5%増、中部が3・9%増などだった。
職種別では前年度比の加重平均で交通誘導警備員Bが7・0%増、交通誘導警備員Aが6・8%増と伸びが顕著だったほか、トンネル特殊工が4・9%増、配管工と普通作業員が各4・2%増、特殊作業員、運転手(一般)、軽作業員が各4・1%増と高い伸びを見せた。交通誘導員や作業員、運転手といった標本数が多い職種の単価上昇が全体の加重平均値を底上げしたと考えられる。
また労務単価には、事業主が負担すべき人件費(必要経費分)が含まれておらず、下請け代金に必要経費分を計上しない、または下請け代金から値引くことは不当な行為であることを明確化し、注意喚起している。
会見で石井啓一大臣は「新単価は3月1日以降に契約締結するゼロ国債を含めた補正予算による発注工事にも適用できる。今回の改定をはじめとして公共事業の円滑な施行に万全を期すとともに、施工時期の平準化を進めたい」としたほか、建設企業に対して「労務単価の引き上げが現場の技能労働者の賃金水準向上の好循環につながるよう元請け・下請けの立場を問わず改定後の労務単価の水準等を踏まえて適切な請負代金で契約をし、賃金水準の確保に努めていただきたい」と要請した。
なお、「屋根ふき工」「建築ブロック工」については十分な有効標本数が確保できず、単価設定に至らなかった。
〈記者の眼〉
3月から適用する新単価が過去最高値となった。実勢単価が正確に反映されていることを考えれば、太田前大臣や石井大臣が建設業団体に対して継続的に要請してきた適切な賃金水準の確保が一定の成果を上げ、元請け企業も努力した結果と見るべきだ。また職種別で交通誘導警備員の単価が大幅に上昇していることは望ましいが、単価を上げなければ人が集まらないという厳しい現状の裏返しでもある。今後は新単価を用いた適正な価格による発注が進み、現場で働く人の賃金水準がしっかりと向上するような取り組みの徹底が求められる。