〈冬虫夏草〉 新元号
2019/04/26コラム
冬虫夏草
5月1日より新元号である『令和』となる。
新聞などでは、元号を誰が主導したのかとか、秘密保持における確執などが報道されているが、それは週刊誌などではなく、新聞で国民に知らせるべき事なのであろうか。
さて、元号はこれまでは漢詩などからの出典であったが、今回は万葉集という日本独自のものからの出典ということが一つの特徴であると報道されていた。
ただ、万葉集そのものは漢詩タイプで記載されている。
その万葉集は特別な貴族だけではなく、詩歌が掲載されている。
勿論、読み書きができないとだめなので、まったくの庶民というわけではないだろう。
その中に沢山の防人の歌がのっている。
“父母が、頭掻き撫で、幸くあれて、言ひし言葉ぜ、忘れかねつる”というものがある。その昔には教科書にも載っていた有名な歌である。
作者は丈部稲麻呂で奈良時代の防人。駿河(静岡県)の人で生没不詳。
遠く静岡の地から九州や対馬などの防衛に赴くのだから、偉丈夫の大人であろう。
両親の前で跪き、出立を告げる際に、歳をとった両親が小さい子にするように頭を撫でているシーンが想像され、心が打たれる。
その年は755年で現在から1200年以上前である。
1000年以上経ても、人の心の様は変わらないことが如実に示され、感慨深いものがある。
現在は、人と人との関わりも薄くなり、日本だけではなく、外国の人が身近にいるグローバルな時代である。
『最近の若者は』というのは、ピラミッドに落書きされていたそうであり、文明や文化が変わっても、人の心はそう変わらないということだろうか。
古来よりある元号が変わった今、様々な思いに馳せられる。
寄稿者:冬虫夏草
長きに渡り、地方自治体における総合評価制度の実際の現場で評価に携わってきた。現在も総合評価を探究し、ゼネコンはじめ多くの建設企業から相談を受けている