《連載①・土木における外国人労働者》 マルチ感求められる土木作業員には不向き?
2019/05/07特集企画/PR
冬虫夏草
建設現場で雇用確保の難しさが叫ばれている中、政府は外国人労働者の大幅受け入れを決定した。
しかし、これを土木工事を主体とする建設業者に限っていれば、微妙な問題がある。
まず、技能者の受け入れ期間は3年から5年で、経営の上での基幹的人材にはなれないという点が挙げられる。そもそも、『建設分野における外国人材の活用に係る緊急措置を検討する閣僚会議』においても、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会等の関連施設整備等による一時的な建設需要の増大に対応するため、緊急かつ時限的措置として規定している。
さらに、施策の目的からも、建築作業の方に重点が置かれている傾向が見て取れる。
外国人技能実習生が必ず実習として行う作業、それに付随する作業、使用する材料、機器などが決められており、土木関連では、さく井、コンクリート圧送施工、型枠施工、建設機械施工となっている。それ以外の作業は違法な作業と認定され、現場でマルチに働かなければならない土木作業員としては採用は難しいものがある。
無論、楽観的にみれば、2号研修生の一部は日本に慣れ、帰化し家族を呼び寄せる人も出てくるだろう。そして、会社の基幹的技術者となる可能性もある。
しかし、思い起こしてもらいたい。今から約30年前となる1990年に建設関連の労働力不足を補うとして、日系ブラジル人が多数来日した。
現在でも、日本国内に日系ブラジル人は35万人いるとみられているが、建設労働者として定着している人はどれだけいるだろうか。
2020年オリンピック・パラリンピック東京大会等の関連施設整備等における緊急避難的人材確保としては有効であるが、公共工事を主体とした土木建設業者にとっては絶対的に必要となるものではないように思われる。
ただ、建設業界内において活性化した建築工事業者に労働者が奪われるのは、(土木にとって)頭の痛い問題である。
寄稿者:冬虫夏草
長きに渡り、地方自治体における総合評価制度の実際の現場で評価に携わってきた
現在も総合評価制度を探究し、ゼネコンはじめ多くの建設企業から相談を受けている