【アンケート+記者の眼】 「魅力感じる」増も「子どもには就かせたくない」多数
2016/05/18記者の目/論説
建設メール
日本建設産業職員労働組合協議会(日建協)は、毎年実施している時短アンケートを本年度も行った。建設業に対して「魅力を感じている」人は増加傾向にあるが、55%にとどまっており、また「自分の子どもを建設産業に就職させたいか」の問いには、多くが否定的な回答をしている。やりがいは感じているが、その一方で労働時間が長いなどの「大変さ」を強く感じていることがうかがえる。
建設業に対して魅力を感じている人は、2000年から09年までは40%前後と低い水準にあったが、その後増加傾向に転じ、このところ3年連続で増加している。ただ、増加幅は小さく、魅力を感じているのは前年比1・7ポイント増の55%にとどまった。
魅力を感じる理由は、「建設したものが後世に残る」が最も多く、次いで「創造する喜び」となっている。
ただ、「建設業に魅力を感じる」と回答した人でも、「子どもを建設産業に就職させたいか」の問いでは、53%が「できれば就職させたくない」、12%が「絶対就職させたくない」と合計65%が否定的な回答をしており、魅力は感じつつも、子どもには「大変な思いをさせたくない」と考えている状況がうかがえる。
所定外労働時間の状況を見ると、外勤・技術系は月あたり79・7時間。11年ぶりに80時間を下回ったが、依然として全産業の58・8%と比べて非常に長い時間働いていることが分かる。
また、外勤・技術系の3割は月100時間以上の所定外労働時間があることも分かっており、心身ともに大きな負担を抱えながら仕事を続けていることが分かる。このあたりが「子どもは就職させたくない」と考える要因になっていると思われる。
休日の取得状況を見ると、日曜日はおおむね休めているが、土曜日は月2・6(土曜日が月4日として)、祝日は1・3日(祝日が月2日として)と半分程度しか休めていないことも分かった。
建設業への魅力の感じ方、所定外労働時間の推移など、じわじわと改善方向には進んでいる。ただ、例えば所定外労働時間の場合、日建協は月45時間以内を目標としているのに対し、現状は程遠い。一層の職場環境改善が必要と言える。
同調査は、日建協加盟組合の組合員1万2121人を対象に実施したもの。
〈記者の眼〉
「子どもに自分と同じ職業に就いてほしい」と思う人がどれだけいるのだろうか?インターネットで調べると、9割以上が「就いてほしくない」と回答しているアンケートが見つかった。こうした意識調査は、質問の仕方、チェック項目の表現1つで結果に変化が生じる。日建協の調査結果も、一見ショッキングではあるが、「ほかの産業ではどうなのか」「聞き方を変えたらどうなるの」という疑問も同時に生じる。すべての疑問に応える調査が難しいことも分かるが、結果により説得力を持たせるためには、せめて他産業との比較はほしい。資料に説得力があればあるほど、それを見た経営者や発注者の心に響き、それが職場環境改善の推進力になってくる。