〈冬虫夏草〉 経済戦争
2019/07/02コラム
冬虫夏草
このほど大阪でG20が開催され、無難な結末で終えたとは言え、たとえ各国首脳が集まったとしても、1回の会談で解決するほど、問題は簡単ではないことも明らかになった。
米中貿易戦争は世界経済の覇権を争う戦争であろう。
米国は長らく世界を支配していた。
典型的な例がメジャーの存在である。
例えば、米国においてトウモロコシの生産がダブつき、価格が下がったこともあり、米国環境庁(EPA)は、ガソリン供給におけるエタノール燃料の一定量の使用を義務づける「再生可能燃料基準」を制定することで、石油輸入依存脱却を目指した。
当時は日本も巻き込まれ、エタノールブームが起こり、地方自治体も協力し、バイオ燃料施設が多数設置された。
このトウモロコシは米国穀物メジャーが扱うハイブリット種で、二世代以上となると異常を起こすことから、毎年メジャーから種を買わなければならない。
しかし、現在ではトウモロコシ由来のバイオ燃料は取り扱いも難しく、二酸化炭素低減率もその他の燃料減と比べても最悪であることが明らかになっている。
今回の米中貿易戦争はIT技術をめぐる戦争である。
ITに関して米国は一貫して世界をリードしてきた。広大な米国内に光ファイバー網を整備し、IT関連企業を集約したシリコンバレーも整備した。
米国の基礎研究や開発はスタンフォード大やマサチューセッツ工科大の人材が大いに寄与したが、それをもとに発展させた現場技術者はインドや中国人だった。
インドは身分制度が技術層の広がりを阻害したが、中国では国が後押しし、最後の製品化の段階での優位性を確立した。
太陽光発電でもドイツから始まり、世界最大の企業は中国となったのと似ている。
中国のIT関連や携帯電話関連企業は、初期モデルは特許侵害の疑いが濃いものが多いが、その時点で国に守られているため、体力をつけ巨大化したという趣もある。
中国は社会主義国家である。そうであるならば、企業の利益とは労働者階級が本来とるべきものを簒奪していると観るべきものである。
沿岸部に経済特区を設けていたころまでは、生活向上のための牽引剤との言い訳もたつが、国全体で資本主義的経済主義を行っている現在は明らかに矛盾がある。
現在は米国という外患であろうが、内憂の危険は常にあると考えるべきであろう。