石井啓一前国土交通大臣は2019年の新年あいさつで「生産性革命『貫徹の年』と位置付け、成果として結実させる」と語った。しかし、生産性革命のキーワードとなるICT活用工事について、群馬県内で導入しているのは国出先機関を除いて県のみ。群馬県建設業協会(群建協)によるアンケートでは企業側の43%が「普及を感じていない」と答えており「貫徹」に至るまでには受発注者が一体となったさらなる取り組みが必要となる。
群馬県では県土整備部が16年度に試行を開始。拡大に向けて19年度は工程の一部でICT機器を使用する小規模ICTの試行も始めている。しかし、市町村では試行に向けた検討に着手できていないところも多く、国・県・市町村といった発注者と受注者が一体となって導入を促進しているとは言い難い状況にある。
群建協はICT活用工事に関するアンケートを7月に実施。普及・定着について「感じている」と回答したのは27・4%にとどまった。定着していない原因は受発注者双方にあるとの意見が約7割を占め、県内の実態に沿った制度への改善が求められる。
実際にICT活用工事を行っている企業に聞くと「全工程の作業日数が20%減少した」や「オペレーター経験のない人間でも重機を動かせる」など前向きな意見が多く出ている。また、市町村発注の工事でも「メリットがあるから」という理由で使用している企業もあり、ICT活用による生産性向上の効果が感じられる。

一方で機器の価格が高いとの声も多く、発注件数が少ない状況での導入に二の足を踏む企業もある。発注者側に対しても「小規模ICT工事の積極活用」や「発注者指定型での工事増加」「発注者の柔軟な対応」を求める意見が出された。中には「発注者指定型で強制的な導入を促されなければ導入の踏ん切りがつかないのでは」との声もささやかれる。関東地方整備局が19年度に行っているICT施工実績のない企業に技術支援をしながら工事する「3Dチャレンジ型」を取り入れるなど、企業側の積極的な活用を促す意味でも発注者側の準備が必要となりそうだ。
ICT活用工事の促進は、生産性向上だけでなく働き方改革にもつながる建設業の喫緊の課題。公共工事品確法の改正により生産性の向上は受発注者双方の責務となった。国・県・市町村で取り組み状況に差がある現状を変えるためには、受注者の努力だけでなく、発注者も一体となった活動が求められる。