ことし5月に開かれた春季北陸ブロック土木部長会議で、積算基準の改定により新たにICT土工で5000立方メートル未満の区分が新設されたことが紹介されたものの、自治体が求めたのは、さらに小規模な積算基準だった。

新潟県内の自治体でICT活用工事に取り組んでいるのは新潟県と政令市の新潟市のみ。市町村の実態として土量5000立方メートルよりも、さらに小規模な土工や小型建機、簡易的なICT機器に対応した基準が必要であることが浮き彫りとなった。
新潟県建設業協会の植木義明会長は「ICT機械を活用するだけなら市町村レベルでもできる。ただし機械損料をどこで償却していくかが課題。どこかで機械損料を上乗せしてもらわなければならず、ある一定の工事量が無いと賄えない。ボリュームが足りない工事では厳しい」とする。
市の発注工事でICT活用工事に取り組んだ現場代理人は「通常の工事と比較して明確に利益が向上しなければ、中小企業での導入は難しい」と語る。ICT技術の活用で丁張りが不要となったことや作業員の安全性は向上したものの、短期の工事ではICT建機の1台当たりの作業効率は大きく向上するものではなかった。また初めてのICTということもあり、建機はレンタル、UAVによる起工測量や3次元データの作成を外注したため、その分の経費もかかった。「導入までには新しいソフトも必要だが決して安くはない。国の工事を受注する大手と違い、専門の人員を配置することができない中小企業は、まだ外注で対応する必要がある」と実情を明かした。さらに自治体の工事担当者は「いまICT建機として見掛けるバックホウは0・7立方メートルクラスが多いが、市街地の工事でよく使うのは0・25~0・4立方メートルクラス。0・7立方メートルクラスを使うのは大型工事に限られており、そもそも対象となるような大型工事が少ない」と話す。
県内建設会社の多くが軸足を置く市町村工事まで、ICTが普及するにはコストや技術面で受発注者ともに新たな負担を強いられ、まだまだ長い目で見る必要がありそうだ。ただし建設技術の開発は日進月歩で、熟練技術者の減少、担い手の育成は待ったなしである。
中小企業が新技術への投資に踏み切るだけの一定規模の工事量と先行きが求められる。