〈冬虫夏草〉 建設業の労働情勢
2019/11/12コラム
冬虫夏草
日本は若年層の労働人口が減少している。
また、ただでさえ好まれる職種でない建設業にとって、世の中で『働き方改革』の名のもとに進められている事象は事態をますます悪くしている。
建設現場は机の上で行われる作業でないため、自然環境や周辺状況によって施工するスピードが変わっていく。
無論、何の問題もなければ、工期内に完了するのは容易いことであろう。
しかし、実際上は環境の問題のみならず、コストの問題もあり、年間を通じて安定的な利潤を上げることは、かなりの工夫を要することとなる。
また、その工夫を実質的に行うのは、監理技術者だ。
工事では、利潤が大きい工種とそうでない工種があり、利潤が大きい工種だけを受注できる事など計画的にできるものではない。
さらに、その構造から建設業者は規模に合わせ、常に仕事がなければ苦しい状況になる。
そこで、『働き方改革』の一考であるが、最近は4週8休がもてはやされ、若者獲得のための一つの条件となりそうな気配である。
年間5日の強制的な有給もそうであるが、国は自分たちができないことを要求してくる。
厚生労働省で、障害者雇用率が達成されていないことが新聞等で話題になったが、キャリア組は間違いなく、残業時間の上限を超えているし、サービス残業も行っている。
そもそも、公務員の給与体系は残業ありきで成り立っている節さえある。
建設業者も、仕事の効率を上げ職場環境を良くすれば、若者も入ってくるという人もいるが、生産性を上げる前提としての受注が不確定で、設計価格と言う公的に認められた正式な適正価格を割り込む形でしか受注できないという歪みの中では、難度の高い話である。
適切に定められた税金をもっとコスト努力すれば90%で済むだろうと、9割しか払わなかったら、督促状は出さないのであろうか。
100%徴収した際は、是非とも公正取引委員会に取り締まってほしいものである。
来年度からは大企業が、さ来年度からは中小企業でも同一労働同一賃金の原則が適用される。
労働者は時間で働くが、企業は利潤を上げることで継続できる。
その理論でいくと、各企業は固定給を低く抑え、能力給により賃金を配分しないと経営として苦しくなっていく。
すると、賃金テーブルを整備し、福利厚生も明文化し、人事評価を明確化しなければならず、益々人事管理にコストが掛ることとなる。
役所で実現できないことを法律化しないでもらいたい。
寄稿者:冬虫夏草
長きに渡り、地方自治体における総合評価制度の実際の現場で評価に携わってきた
現在も総合評価制度を探究し、ゼネコンはじめ多くの建設企業から相談を受けている