〈冬虫夏草〉 観光立国
2019/12/03コラム
冬虫夏草
昭和38年に制定された「観光基本法」の全部を改正し「観光立国推進基本法」が制定されたのは平成18年で、今から16年前となる。
2015年には、1970年以来45年ぶりに、訪日外国人数が、出国日本人を上回った。
要因として、燃油サーチャージの値下がりによる航空運賃の低下・訪日旅行プロモーションの効果・円安による割安感・ビザの大幅緩和・消費税免税制度の拡充などが挙げられている。
円安といえば、オーストラリアは物価が高く(日本において長く続いたデフレは物価と言う点では世界から取り残された)、普通のバーに行ってカクテルを注文すると1杯2,000円位する。そのオーストラリア人からすると2,000~3,000円で飲み放題となるのは、信じられないほど嬉しいサービスと映るらしい。
2011年には東日本大震災があり、このところ自然災害が毎年のように起きている日本にこれほどの訪日者がいることは喜ばしい限りである。
この背景には、デフレに苦しみ、伸び悩むGDPを内需主導で行うのは、かなりの困難が予想されたこともあろう。
今では『インバウンド』は地方都市においても主要な戦略的獲得目標の一つとなっている。
日本はいつの間にか取り残されている。
日本のGDPは世界3位(米国、中国に次ぐ)だが、国民1人当たりのGDPとなると世界26位となり、シンガポールやカタールなどにも後塵を拝している。
しかも、2016年の日本の時間当たり労働生産性は、米国の3分の2の水準であり、先進国7カ国中では最下位、OECD加盟35カ国中20位となる。
人口が減り、国力が弱くなりつつある中で、生産性が悪いのならば、外からの力を借りなければならないという事情が「観光立国」の1面でもあるのだ。
わが国の現状を鑑みれば、「観光」という産業のみならず、労働力としても外国人ら頼らなければいけないのは、自ら招いた事態である。
「産めよ、育てよ」で子供が4~5人いる家庭や、会社の経理や書類管理を全てデータ化し、クラウド管理を行い、ルーティン業務をロボトミー技術で処理することを、短い期間で実現することができるだろうか。
たしかに、トヨタなどの世界に冠たる大企業では常に新しい試みやイノベーションに挑戦している。
しかし、日本の企業の99.7%は中小企業である。
丁寧さや仕上がり、確実性を追求しても、生産性に力を注がなかったツケがきている。
寄稿者:冬虫夏草
長きに渡り、地方自治体における総合評価制度の実際の現場で評価に携わってきた
現在も総合評価制度を探究し、ゼネコンはじめ多くの建設企業から相談を受けている