〈冬虫夏草〉 労働時間
2019/12/10コラム
冬虫夏草
「働き方改革」の中心的課題の1つには、労働時間が挙げられる。
残業時間の上限は、原則として月45時間・年360時間とし、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできない。実働21日とすると、1日当たり約1.2時間となり、実現できるかということとは別に、収入が低くなることを重要視する人もいる。
さらに、労働法改正とは別に、「労働安全衛生法」の改正により「客観的方法による労働時間の把握」が義務化され、管理職を含めた労働時間の把握が企業の責務となる。
今まで曖昧とされてきた労働時間の把握方法が明確化され、労務管理の徹底が求められることとなる。
これまで、管理監督者に関しては、労働基準法において、休憩・休日の適用から除外されることもあり、労働時間の管理が曖昧になっていたが、勤怠時間の管理手法等で対応すべきガイドラインが制定されることとなった。
これまでは、管理職になったとたん、残業代に上限が生じたりして、管理職手当がついても、給料が下がるという現象も一部で見られたが、今回は企業に課せられた義務としての労働時間の把握であるため、管理監督者であっても深夜勤務時間の残業代は支給する必要があるという、そもそも論となるのである。
しかし、企業としては支払い賃金を急激に上げることは、会社の死活問題になることから、当然、残業は抑制する方向となる。
一方、やるべき業務量に変化がないのなら、効率性を求めることとなるのが当然であろう。
さらに、「裁量労働制」の導入である。
裁量労働制が導入されたのは、1987年で、11の専門職に初めて適用された。しかし、今では、19業務に適用され、企業経営に関わる企画・立案・調査・分析などを担う労働者も対象となっている。これは、労使が事前に決めた「見なし労働時間」に基づいて支払われ、法定労働時間を超えても、残業代が支払われることはない。
所謂、能力主義で成果を出せば、8時間以内でも問題はない。
これまで日本では、年功序列・終身雇用の「日本的雇用」制度をとってきており、若い時の低賃金労働をキャリアの後半で取り返し、定年で満額の退職金を受け取ることで帳尻が合う仕組みになっていた。
本当は労働時間が問題なのではない。OECD 38カ国中日本は22位(上位になるほど労働時間が長い)であり、米国の方が一人あたりの労働時間が長いのである。
世界の潮流に合わせ、能力主義を取り入れる準備を始めているようにも見える。
寄稿者:冬虫夏草
長きに渡り、地方自治体における総合評価制度の実際の現場で評価に携わってきた
現在も総合評価制度を探究し、ゼネコンはじめ多くの建設企業から相談を受けている