〈冬虫夏草〉 謹賀新年
2020/01/07コラム
冬虫夏草
昔は少なくとも三が日は、開いている店も少なく、基本的には保存食でもある正月料理を自宅で食べていたものである。
僧侶『一休宗純』(いわゆる一休さん)が詠んだ正月の句として“門松は冥土の旅の一里塚 めでたくもあり めでたくもなし”がある。
皮肉屋である一休さんらしい句であるが、逆にいえば正月はめでたいものとして、世間総出でお祝い気分だから、一言皮肉を言いたかったのであろう。
ここ近年は大震災が起きている。
大震災は閣議決定を経て確定される、行政上の名称である。
近年の大震災は、関東大震災(1923年)、阪神・淡路大震災(1995年)、東日本大震災( 2011年)と続いてあるが、関東大震災から阪神・淡路大震災まで72年あるが、阪神・淡路大震災から東日本大震災までは16年しか間がない。
72年間であれば、一生に一度会うかどうかであるが、16年間であれば、人生で4~5回会うこととなる。
昨年は、災害の年でもあったが、災害を起こした台風は規模もルートも過去とは一線を画すものとなっている。
台風が度々襲来した沖縄県では、RC造の住宅が多い。統計的に言うと、鉄筋コンクリート造94%、木造5%と圧倒的な数字だ。
温暖化が進み、台風の発生地点が変化し、必然的にルートが変化してきている状況は、決して一時的なことではない。
生活習慣病と同じで、長い年月で蓄積したものは、一朝一夕で改善されるものではない。
さらに言うなら、世界は改善する姿勢ですら消極的である。
明治時代、河川工事のために派遣されたオランダ人技師デ・レーケが、日本の河川を見て「これは川ではない。滝である。」と言ったと伝えられている。
日本の河川は欧米に比べ急峻なのである。さらに、国土交通省のハザードマップによると、洪水氾濫域の面積は日本の国土の10%を占しめていて、ここに日本の全人口の51%、日本の持つ資産の75%が集中している。
国土強靭化の要は正に河川工事にあるのだ。
年の初めに際し、安心がなければ、お祝いの気分にはなれない。政治が主導すべきであるが、安全・安心な国土づくりを望む。
寄稿者:冬虫夏草
長きに渡り、地方自治体における総合評価制度の実際の現場で評価に携わってきた
現在も総合評価制度を探究し、ゼネコンはじめ多くの建設企業から相談を受けている