国土交通省は民間建設工事の適正な品質を確保するための指針(民間工事指針)を初めて策定した。民間建設工事の請負契約に先立ち、受発注者があらかじめ協議しておくことが必要と考えられる施工上のリスクに関する協議項目を基本的枠組みとしてまとめたもので、標準的な12項目について基本的な考え方と留意事項を示した。指針に基づきリスクに対する事前の情報共有と適切な協議が進むことで円滑な工事につながり、消費者が安心して住宅購入や施設利用を行うことが期待される。
指針では、調査会社の調査結果や専門的知見を活用した事前調査の重要性のほか、施工者が工事経験を基に専門的な見解を提案し、受発注者間で適切に情報共有することの必要性も示した。また、関係者間で協力体制を構築し、実際に施工上のリスクが明らかになった場合に誰が費用を負担し、請負代金とリスク負担の関係がどのように整理されているかについて受発注者が十分に理解した上で工事請負契約の締結に至ることが必要とした。
指針の対象は、マンションやオフィスビルなど民間企業が発注する建設業法上の建設工事とし、改修や解体工事も含む。個人が発注する一般住宅は対象外となる。
国交省では14日付で土地・建設産業局の不動産業課長と建設業課長の連名で不動産業および建設業の関係団体宛に通知を出しており、広く使われるように指針の周知を図っていく。
〈記者の眼〉
国交省の不動産業課と建設業課が連名で各所管団体に通知を行うことは画期的で、民間契約を対象とする指針の浸透には双方の業界団体の理解が必要不可欠であることを物語っている。リスク負担に対して「言った、言わない」という責任の押し付け合いを回避するには書面で証拠を残すことが重要となる。その意味では事前協議が想定される項目を分かりやすく整理したリストが今回示されたことで、上手に活用すれば、受発注者間のトラブル防止につながるだろう。今後の不動産業、建設業の両関係団体の姿勢が注目される。