茨城県では昨年9月、茨城県建設業協会が女性部会「建女ひばり会」(柳瀬香織会長)を立ち上げた。同協会会員企業の女性技術者を中心に現在122人が加入しており、発足以来、女性技術者が手掛ける建設現場の見学会や懇談会を開催するなど、積極的な活動を展開している。
国土交通省や建設業5団体等が1月に策定した「女性の定着に向けた建設産業行動計画」では、2024年までに都道府県単位で活動している団体の「建設産業女性定着支援ネットワーク」への加入を全ての都道府県で目指すことを掲げている。このネットワークに19年に加入し、他県の女性活躍推進団体との連携や情報の共有化を図り、良い事例を積極的に導入するなど水平展開も模索する。

最近の具体的な活動として、県土木部の女性職員と意見交換会を開催した。男性社会といわれる建設業の中で「働き続けられるモチベーションとは何か」や「プライベートと仕事の両立」をテーマとして話し合われた。偏見は少しずつ解消されてきているとはいえ、まだまだ女性が働きやすい環境とはいえないのが現状であり、ここで出された課題や要望を情報共有し、それぞれの立場で改善していくことが重要との認識を深めた。
柳瀬会長は「発注者を含め、女性が輝くための課題や対応策を話し合えたことは大きな収穫」とした上で、「人それぞれ事情や環境が違うので、多様性を認める柔軟な対応が必要となる。そのためには社員一人一人がお互いを把握し、配慮することが重要。理解者が多いほど女性も働きやすい。これが定着につながる」と強調する。
建設業には現場の開始時間が早いことや技術者の常駐など、育児との両立が難しいという大きな課題が横たわる。女性活用に向けたモデルケースも示されつつあるが、都市部をベースに作成されたケースは、地方の中小企業に合致しないことも少なくない。
地方における中小企業ならではの「女性活躍、定着に向けた取り組み」を共有し、少ない技術者や技能者を守るためのサポート体制としても、建女ひばり会の果たす役割は非常に大きいだろう。
同会では今後、他県の女性活躍推進団体との連携をはじめ、支部単位での会員交流やキャリア別、年代別、職種別の親睦会も視野に入れている。また建設業協会が主催している企業説明会での女性活躍推進の活動報告、小中学校への出前講座、県内建設産業に関連する各種団体が一体となって開く建設フェスタへの参加など、さまざまな取り組みを実施し、同じ立場で語り合える環境の整備やPR活動もしていく。
また女性らしさを取り入れた会のロゴを使用したステッカーや、現場へ設置する横断幕を用意するなど、女性が現場で働くことにやりがいを感じ、仕事にプライドを持てるような取り組みも行っている。
少子化による担い手不足で他産業との競争の時代に突入している中で、いかに建設業に目を向けてもらえるか。これまでの負のイメージを捨ててもらえるか。県内の建設業界をリードする同協会と建女ひばり会の取り組みが女性定着の鍵を握る。