〈壁耳〉 多様な入札契約方式は駆け込み寺?
2016/07/26記者の目/論説
建設メール
デスク 神奈川県小田原市の市民ホール建設事業は昨年7月に入札を行ったが、予定価格と入札額に20億円以上の開きがあって不調になったため、事業の見直しを行っている。市民の意見を踏まえて今後の方向性を決めるため、具体的な入札契約方式は未定だが、入札不調になった事業を、より良い形で復活させるためのモデルになる可能性がある。
記者 初めて町からも応募があったと聞きましたが。
デスク 高知県中土佐町は南海トラフ地震に備えて庁舎、消防分署、保育所の3施設を高台へ移転する計画で、町にとっての一大プロジェクト。人口が約7500人、建築関係の技術職員が1人という自治体の規模から考えると、町単独で事業を進めることが非常に難しいことに気が付いたのではないか。
記者 「気が付いた」とはどういう意味ですか。
デスク 多様な入札契約方式モデル事業は3年目を迎えたが、通常、モデル事業に応募する自治体は説明会に参加するか、事前に問い合わせを行う場合が多い。ところが中土佐町は事前に相談せずにモデル事業の追加募集に応募してきたという。担当者も驚いたようだ。
記者 珍しいケースということですか。
デスク そうだと思う。3施設の建設事業を同時並行で行うことは工事間の調整が複雑になるため、規模の大きな自治体でも簡単ではない。構想を進めていく中で課題が浮上したところに、「渡りに船」でモデル事業のことを知ったのではないかな。本年度は追加募集があったことも幸運だったと思うよ。
記者 多様な入札契約方式の需要が増えていることが分かりますね。
デスク 困った時の駆け込み寺のようになっているが、モデル事業だから、それでいいのではないか。全国で同じような悩みを持つ自治体は多いはずで、もっと難しい課題を抱えている場合もあると思う。自治体や事業によって地域の事情や工事の性格が違うのは当たり前の話で、最適な入札契約方式を採用するべきだろう。実際に最近はCM方式やECI方式、設計・施工一括方式を採用する自治体も目立つ。従来の競争入札だけではない、多様な入札契約方式が今後も増えていくことは間違いないと思うよ。