〈冬虫夏草〉 ピンチはチャンス
2020/04/28コラム
冬虫夏草
ピンチの時こそチャンスの時であるとはよく言われることである。
今回の新型コロナによるピンチの状況ではどうなのであろうか。
国会議員の中では、今回を契機にIT環境のより一層の充実を図るべきだという声が上がっている。
我が国は残念ながら先進国の中では、IT後進国となりつつある。
この機に働き方改革とともに仕事におけるITの活用が図られるべきであろう。
ただ、建設業にとっては、ものづくりであるがゆえに、パソコンの中で仕事が完結することはあり得ない。
しかし、ある建設業の社長と話をしている時に、面白い視点を述べていた。
それは、首都圏の機能が低下しているがゆえに、これまでの人手不足が急速に改善されており、今こそ人材獲得のチャンスだというのだ。
資材単価も世界的景気低迷で、落ちてきており、足場や敷鉄板の補充を行う絶好の時期だということも言っていた。
大きい視点で見ると、世界的危機は世界の変革をもたらしている。
14世紀から15世紀にかけてヨーロッパで大流行したペストは、全世界でおよそ8500万人、当時のヨーロッパ人口の3分の1から3分の2に当たる、約2000万から3000万人が死亡したと推定されている。イギリスやイタリアの一部の都市では人口の70%から80%が死亡したとされており、今回の新型コロナと類似する分布は不気味である。
これは、精神的支柱であったキリスト教に対する不信感を募らせた。
また、悪循環と言うか、教会はそもそも人口が激減したことや人心が離れたことも一因として、財政状況が逼迫した。
それが理由かどうかは定かでないが、教会は16世紀に贖宥状(免罪符)を発売し、これを決定的契機として宗教改革が勃発した。
精神世界の一大変革であった。
今回の新型コロナウイルスは客観的にいえば、8割が軽症ならばね2割の人にとっての脅威である。しかし、社会全体が脅威とみなしている。
一方、建設業にとっての変革が求められるものは、IT化ではなく、柔軟な対応力であろう。
協議をテレビ会議で行うとか、連絡事項を定時メールにするなど、速やかな対応策を提示する能力が求められる。
人と同じことをやっていても、求められてから行っても、評価は低くなる。
ピンチをチャンスにかえることにより、小さな変革も大きな流れとなる。
こんな時を逃すのなら、発注者にアピールすることは永遠にできない。
寄稿者:冬虫夏草
長きに渡り、地方自治体における総合評価制度の実際の現場で評価に携わってきた
現在も総合評価制度を探究し、ゼネコンはじめ多くの建設企業から相談を受けている