
国土交通省大臣官房の下野博史官庁営繕部長は「営繕の強みは現場を持っていること。実際に設計をして建設を進める中で、建築に関する施策を打ち出し、現場で実現していく。非常に大変ではあるが一番の強みだと思っており、他省庁を含めて地方自治体にも広めていきたい」と抱負を語る。新国立競技場の建設にも携わるなど現場経験が長く「とにかく徹底的に現場の声を聞き、問題点を見て、フィードバックしていく」ことを職員に伝え、理解を求めていきたいと考えている。
さらに、営繕部の職員に対しては「建築の仕事は机の上でできるものではない。一日でも多く現場に行って自分が携わったものがどう作られていくのか、材料の確保状況なども学んでほしい。まずは自分で学んでいくことが一番。次に営繕部に聞けば答えが返ってくるという状況になれば」とした上で、地方整備局や公共建築相談窓口のさらなる利用を呼び掛ける。
また官庁施設の防災・減災対策は「最優先事項だと思っている」と説明。今後も大地震や大雨等の発生が想定されることから「災害活動の拠点となる施設が使えなくなってしまったらおしまい。テレワークで災害対応はできない。最優先は耐震化を確実に進め、非常用電源を備えること。特定天井対策も進めるべき」と強調する。
3次元データによるBIMの活用など営繕工事の生産性向上・施工合理化に対しては「図面のチェック、設計から施工などの段階で、BIMを使って少しでも合理化できるものがあればと思っている。長野第1地方合同庁舎では、設計から施工まで一貫してBIMに取り組む」と意欲を見せる。
適正工期の設定に向けては「発注者の理解がなければ難しい。単純に発注者の都合で完成させるようなことは改めなければならない。段取りが一番であり、発注者が発注者としてやるべきことをクリアしていく必要がある」との見解を示した。
【略歴】しもの・ひろし
1988年早稲田大学理工学部卒、建設省採用。国交省関東地方整備局東京第一営繕事務所長、大臣官房官庁営繕部整備課特別整備室長、日本スポーツ振興センター新国立競技場設置本部統括役、内閣官房内閣審議官を経て本年7月21日付で現職。55歳。東京都出身。